Research Abstract |
本研究では,実社会の多様な構造物,特に回転体や運動体の動ひずみのオンラインモニタリングを可能とし,安全で安心な社会基盤の構築とその健全性評価の実現を目的に,多層カーボンナノチューブ(Multi-Walled Carbon NanoTube : MWCNT)のみを使用し,その配向性を制御して樹脂薄膜中に分散させる技術を開発し,安定した高感度(ゲージ率>1000)の実現と,動ひずみを10ppm以下の分解能で実時間非接触測定する技術とその具体的な測定システムを開発することを目的としている. 本年度は,超高感度(ゲージ率>1000)を実現するための多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の配列制御して分散させる樹脂薄膜作製技術の確立を目標とし,分子動力学解析技術と第一原理解析技術を応用し,カーボンナノチューブの電気伝導特性と作用ひずみの相関性を解析的に検討した.CNTの基本物性を支配していると考えられるグラフェンシートを用いて,このモデルの六員環を変形させ,バンド構造の変化を解析的に検討し,1)六員環が正六角形状の場合はグラフェンシートは金属的な電動特性を示しているが,一軸負荷により炭素間距離の差が約10%以上変形すると,バンド構造内には明らかにバンドギャップが発生し,電気電動特性は金属的な伝導から半導体的な伝導に変化すること,2)六員環が正六角形(b/a=1)を保持している場合には,バント構造に顕著な変化は現れず,金属伝導特性が維持されるが,原子間距離の比が1からひずむほど静水圧の影響が顕在化し,原子間距離比の値が一定でも電気伝導特性は金属的なものから半導体的なものまで変化し得ること,などを定量的に明らかにした. また,ナノ粒子分散結晶核制御による化学気相蒸着法により林立したMWCNTを成長させるシステムの開発に成功し,今年度の当初目標を達成した.
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