2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21246040
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 浩一 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (80228410)
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Keywords | ビジュアルサーボ / 高速画像処理 / 蛍光顕微鏡 / 線虫 / 3D |
Research Abstract |
本研究の目的は、制御工学・ロボティクス・情報科学の理論と手法を集約し、生物の運動を多様な観察手法により高い時間分解能と高い空間分解能で計測する顕微鏡システムを構築することである。 医学・生物学の研究において、生体反応を観察することは本質的であり、なかでも運動計測は最重要である。しかし、倍率と観察フィールドのトレードオフのため、運動計測を高い分解能で行うことは困難であった。本研究では、顕微鏡ステージのリアルタイム制御により運動を追跡するという、本質的な解決法により、各種刺激に対する生物の反応を多様な観察手法でリアルタイムに解析・記録する装置を開発する。 本年度は、多細胞生物で多くの研究にモデル生物として用いられている線虫(C.elegans)を明視野ならびに蛍光観察できるシステムを構築した。具体的には、線虫の頭部ナーブリングと呼ばれる、神経回路が集中している場所の明視野画像をパターンマッチングにより検出し、追跡するためのXYZモータステージと高速カメラ画像処理手法を開発した。さらに、光学系に工夫を加え、遺伝子組み換えによりナーブリング中のASERニューロンをGFPで修飾し、蛍光観察できるように改変した線虫を用いて、明視野追跡と蛍光観察を両立するシステムを開発した。 さらに、共焦点ユニットを導入し、神経細胞のきわめてクリアなスライス像を得ることに成功した。今後は、スライス像を画像処理により正規化し、3次元スタックを作ることにより、「動く線虫の神経細胞の3次元蛍光画像」の取得に挑戦する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明視野と蛍光観察の両立は実現した。トラッキングのロバスト性は高いレベルで実現している。蛍光観察の定量化と3次元化が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
明視野観察した線虫の模様を解析し、頭部を発見・追跡するための画像処理アルゴリズムを開発する。明視野観察では、対象の厚みを透過した屈折像が観測される。しかし、対象の厚み方向には観測したい細胞のほかにも多くの器官が存在するので、また、線虫の動きに応じてそれらの器官は位置がずれるので、得られる明視野像は一定ではない。さらに、対象が運動する培地上の移動軌跡、ごみ、シャーレ壁などの見かけ上の障害物が存在する、このような状況でも狙った細胞を追跡することができる画像処理手法を開発する.明視野観察に用いるカメラは運動追跡に、蛍光観察に用いるカメラは神経活動の記録に用いるが、これらのカメラは個々に専用のソフトウェアで管理される。しかし、運動と神経活動の関連付けのためには、これらは正確に同期されていなくてはならない。正確に時間管理のできるリアルタイムOSを開発するとともに、それにより取得タイミングを制御し、複数のカメラを同期させるためのハードウェアとソフトウェアを開発する。さらに、神経活動の自動計測を試みる。線虫に対して温度、触覚、匂い、塩分などの刺激を与え、それにともなう行動変化と神経活動変化を同時に計測する。
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