Research Abstract |
室内環境形成寄与率CRIは,各々の熱負荷要素や空調要素の単位の伝熱量に対する室内各点で求められる室温上昇もしくは下降で,伝熱要素に対する室温の感度を示し,室内の温熱環境シミュレーションにおいて広く利用されている。本年度は,非空調時など室内の熱輸送が自然対流と放射熱伝達によって生じる場合において,室内温熱環境形成CRIの定義および計算法を提案し,CRIをエネルギーシミュレーションのTRNSYSへ組込むことを研究目標とした。 これまでCRIに関する研究は,室内が換気されていることを想定しており,更には空調による強制対流が流れ場に対し支配的な室内を研究対象として進めて来た。しかし,非空調時の換気がない状態にあり,自然対流が支配的な室内では,従来のCRIの定義に基づいた定常発熱に対する定常温度分布の計算が無限大の温度分布を算出するという不具合を示すため,従来のCRIの計算手法は適応できない。この問題を解决するため,本研究では自然対流場における個々の発熱源に対し,その発熱量に対応した一様分布吸熱源を設定したCRIの計算法を提案した。一様分布吸熱源により,温度分布の無限上昇は解决され,CRIは自然対流場の個々の熱源による温度上昇,下降を表す有限な分布として算出される。結果,CRIにより自然対流場における各熱源の発熱の室内の分配を示すことができる。この自然対流場におけるCRIを開発したことで,非空調時におけるエネルギーシミュレーションにCRIを適用することが可能となった。 また、汎用性の高い熱輸送ネットワーク解析TRNSYSを対象とし,建物のエネルギーシミュレーションへの、CRIモデルの組み込みを行い,室内の温度分布の非一様性を相応の精度と汎用性を持って解析可能であることを示した。今後は,自然換気,太陽熱利用,昼光利用など自然エネルギーの有効利用を計りつつ,暖冷房,換気などの空気調和を行なう大規模な建物における,期間のエネルギーシミュレーションを実施し,開発したモデルの妥当性,限界を検討することを実施することを検討する。
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