2011 Fiscal Year Annual Research Report
粒界工学に基づく高耐粒界劣化材料作製プロセスの確立
Project/Area Number |
21246104
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
粉川 博之 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10133050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 裕 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (00292243)
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Keywords | 粒界工学 / 対応粒界 / オーステナイト / ステンレス鋼 / 加工熱処理 / 溶接熱影響 / 粒界腐食 / 粒界性格分布 |
Research Abstract |
通常の多結晶金属材料は、劣化損傷が粒界を起点として発生し粒界に沿って伝搬することも多く、粒界劣化現象が材料特性を決める場合も少なくない。オーステナイト系材料は、耐熱耐食性に優れ、発電や化学プラントなどで非常に過酷な環境で使用されるが、粒界劣化現象の克服が大きな課題として残されている。一方、低エネルギー粒界(対応粒界)は粒界劣化現象に対して強い抵抗性を有することから、粒界での原子配列を低エネルギー構造に変化させ、材料中の対応粒界密度を高めることによって粒界に起因する劣化現象を抑制する粒界工学が注目されている。筆者らは、通常のオーステナイト系ステンレス鋼に粒界工学に基づく加工熱処理を適用し、超高対応粒界密度材料の作製に成功し、高い耐粒界腐食特性を示した。本研究では、この加工熱処理法をステンレス鋼ならびにニッケル合金を中心に広く一般的な材料に適用して、粒界工学制御材料の作製プロセスの確立を目指すとともに、得られた超高対応粒界密度材料の諸特性を評価し、高度な粒界工学制御が材料の種々の粒界劣化現象に対して高い耐性を示すことを実証することを目的とする。 昨年度までに、粒界工学制御材料を作製し顕著な耐粒界腐食性を付与することに成功した。さらに、鋭敏化に起因して溶接熱影響部に生じるウェルドディケイ抑制にも顕著な効果があることも実証した。しかし、粒界工学制御材料の実用時には、実施工に際して加工ひずみを受けた後溶接される場合がしばしばある。そこで、本年度は、粒界工学制御材に対して、ひずみを与えた後溶接を行い、溶接部の粒界腐食性を評価した。その結果、ひずみ量5%以上では回復・再結晶により粒界性格分布に変化が見られたが、粒界工学制御材料は全ての条件で通常の未制御材料より粒界腐食が顕著に抑制されていることから、粒界工学制御材料がひずみ付加後溶接においても、高い耐粒界腐食性を維持することを明らかにした。
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