2010 Fiscal Year Annual Research Report
Al合金系めっきで表面処理した高張力鋼の水素脆化とその抑制
Project/Area Number |
21246107
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
水流 徹 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (20092562)
|
Keywords | 表面処理 / 水素脆化 / 高張力鋼 / 亜鉛めっき / 低ひずみ速度引張試験 / SSRT |
Research Abstract |
高張力鋼の表面処理と水素脆化の関係を明らかにするために,1400MPa級の高張力鋼板を引張試験片として,定電流カソード分極によって水素を発生させながら低ひずみ速度引張(SSRT)試験をおこなった。その結果,カソード分極による水素の発生とともに鋼中へ水素が侵入し,引張試験の破断伸びが空気中での試験および分極しない場合に比べて大幅に減少し,水素脆化することが確認された。 一方,亜鉛系めっきによる表面処理では,亜鉛による犠牲防食電位が-1.0V(vsSSE)付近にあって,防食される鋼材表面で水素発生反応が起こる。そのため,定電位でのカソード分極電位を-1.0Vにした場合のSSRT試験では破断伸びの大幅な減少が起こったが,分極電位を-0.7Vおよび-0.6Vにした場合には破断伸びは空気中とほぼ同じで,脆化は見られなかった。 1400MPa級の高張力鋼に溶融亜鉛めっきを施すことは困難であることから,電気めっきにより亜鉛を2.7μmめっきした高張力鋼について,0.5MNaCI水溶液中でSSRT試験を行った。めっき後に十分な時間をおけば,電気めっきにより侵入した水素の影響はなくなること,亜鉛めっき層に下地鋼板に達する傷を付け,犠牲防食状態でSSRT試験を行った場合には-1.0Vで分極した場合と同様に破断伸びが大幅に減少し,水素脆化が起こることが確認された。さらに,大気腐食を模擬した環境として,0.5MNaCl水溶液の液滴を傷部にのせ,液滴が完全に乾燥しない相対湿度に保持してSSRT試験を行ったところ,亜鉛めっきをしていない高張力鋼では破断伸びの顕著な低下は見られなかったが,亜鉛めっきした高張力鋼では破断伸びが減少し,水素脆化感受性が確認された。
|