2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しい微粒化概念に基づく液体ロケットエンジン用微粒化シミュレータの開発
Project/Area Number |
21246125
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梅村 章 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60134152)
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Keywords | 微粒化理論 / 数値シミュレーション / サブグリッドモデル / モデリング / 液体ロケット / 乱流微粒化 / 自己不安定化機構 / 二流体同軸ジェット |
Research Abstract |
この年度の研究実施計画に従い、乱流微粒化サブグリッドモデルを基礎付ける新しい理論を展開すると共に、本研究で採用している新しい微粒化概念の妥当性を検証する宇宙実験の準備を進めた。特筆すべきは次の2点である。 (1)本研究では、液体の微粒化で本質的な役割を果たすのは、伝播性のある表面張力波であるという新しい考えに基づいて研究を行っており、これまで説明できなかった様々な低速噴射液の微粒化現象の物理を解明することに成功してきた。高速噴射液に発生する乱流微粒化も、表面張力波の共鳴現象として捉えれば合理的に説明でき、乱流微粒化サブグリッドモデルの構築が可能になる。実際に、この考え方によって理論的に閉じた乱流微粒化サブグリッドモデルが構築できることを確認した。また、液糸形成および微粒化条件を定式化するために必要な理論的考察と数値実験を開始した。それにより、当初の予想を上回る独創的で有力な乱流微粒化サブグリッドモデルを最終年度までに完成できる目途が立った。このサブグリッドモデルは、本研究で対象にしている液体ロケットエンジンの噴射要素に限らず、超音波微粒化も含め一般的な噴射液の乱流微粒化の記述に使用できるモデルになりえるものである。 (2)上記の研究を通して、ノズルの存在が乱流微粒化に果たす役割も明瞭になった。その結果によれば、最高性能のスーパーコンピューターを使用しても、良くデザインされた流れ要素でもって計算しないと、ノズルからの噴射液の乱流微粒化過程の詳細な物理を的確に抽出することは難しいことが判明した。そのため、この年度に予定していたノズルからの噴射液の直接数値計算は(1)の数値実験が終わるまで延期し、代わりに、前に実施している高速噴射液先端部の微粒化の数値計算に噴霧の蒸発および周囲高温空気との混合ならび反応の計算を組み込んで、実際的な噴霧の着火過程を調べる研究をおこなった。その結果、微粒化液滴の存在が引き起こす乱流特性が着火過程に及ぼす影響を世界で初めて明らかにすることができた。KIVAなどを用いておこなわれている噴霧燃焼の直接計算シミュレータは、微粒化と実際の液滴を考えていない点においてDNSと称されているものの、実際にはDNSにはなっていない。これまでのDNSの欠陥をあきらかにすると共に、改良の方向性を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究を進めていくうちに、物理探求の深度が一層深まり、当初想定していたよりも有力な乱流微粒化サブグリッドモデルを構築する独創的なアイデアを得た。宇宙実験の実施に結びつけることができ、基礎概念の実験的詳細検証が可能になった。また、宇宙実験成果の公表に照準を合わせたプリーカーサーとしてこれまで国際誌に発表してきている研究成果は、国際的に非常に高い評価を獲得している。
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Strategy for Future Research Activity |
結果的に当初の研究計画と多少異なる道筋を辿った部分はあるものの、当初の研究目標を期間内に達成できる目途が立っている。従って、現在の構想に基づき必要な研究を着実にこなしていくことが大切であると考えている。
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Research Products
(5 results)