2011 Fiscal Year Annual Research Report
リボソームRNA遺伝子のゲノムの安定性維持における役割
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21247003
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
小林 武彦 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 教授 (40270475)
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Keywords | DNA損傷 / 細胞老化 / ゲノムの不安定性 / 組換え / 出芽酵母 / リボソームRNA遺伝子 / 老化シグナル / 若返り |
Research Abstract |
rDNA不安定と細胞老化の解析 これまでの変異株の大規模なスクリーニングによりrDNAが不安定化した株を多数単離した。それらのいくつかについて寿命を測定し、rDNAの不安定性と寿命の短縮が相関することが確認された。しかしその中には例外的に寿命の短縮との相関がみられない変異株が存在した。それらはrDNAから発せられる「老化シグナル」が低下あるいはその伝達機構に不具合が生じており、そのためrDNAの異常が老化つまり細胞増殖の停止を誘導できなくなっていると思われる。昨年度はその中の1つの変異株について解析した。この変異株はrDNAが非常に不安定化しているにも関わらず寿命の短縮は限定的である。またrDNAが短寿命の代表的な変異株であるsir2変異株と二重変異株を作成すると、sir2変異単独の場合に比べてrDNAが不安定なままであるにも関わらず大幅な寿命の回復が観察された。以上のことからこの変異遺伝子の産物は「老化シグナル」として働いている可能性があり、その作用機序を解明すべく解析を進めている。 細胞の若返りの分子機構の解析 母細胞では老化と共にrDNAの不安定化が観察されるが、母細胞から生まれた娘細胞ではその安定性が回復している。この機構を解明するため、母と娘細胞を分離しrDNAの組換えを観察したところ一方の細胞で有意に組換えが生じていることが判明した。この機構が娘細胞でのrDNAの安定性の回復に結びついていると考えられる。現在さらに検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、大規模なスクリーニングによりrDNAが不安定化しているにも関わらず寿命が短くならない変異株を発見した。これはまさに老化シグナルの伝達に関わる遺伝子の変異株と考えられ、今後の計画の発展に多大に寄与する。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は上に書いたようにrDNAからの老化シグナルの同定に全力を注ぎ込む。この変異遺伝子と同じシグナル伝達経路にあると思われる遺伝子のノックアウトを行い、それらの寿命を測定する。必要があればrDNAが不安定な短寿命の株と交配し、寿命に与える影響を調べ、まずは遺伝学的に老化シグナルの実体に迫る予定である。細胞の若返りの分子機構の解析についても計画通り進める予定である。
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Research Products
(13 results)