2009 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖のクロロフィルd生産生物の実体とクロロフィルdの生態学的意義に関する研究
Project/Area Number |
21247005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮下 英明 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 准教授 (50323746)
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Keywords | クロロフィルd / 微生物生態 / 琵琶湖 / 生態学的位置 |
Research Abstract |
平成21年度は、琵琶湖沿岸において湖水や付着物の採取をおこない、BG-11培地と近赤外光を用いた培養によってクロロフィルd生産生物の分離・培養を試みた。さらに、琵琶湖の湖心において定期的に層別採水し、PCR-DGGE法を用いて湖水中に存在する光合成微生物の群集構造解析をおこなった。沿岸13地点で採取したサンプルのうち、1地点で採取した付着物サンプル中から近赤外光照射下で生育する単細胞のシアノバクテリアが見られ、これを単藻化して分離株とした。HPLCを用いてこの株の色素解析を行ったところ、主要色素としてクロロフィルdを含んでいた。さらに、この培養株からDNAを抽出し、SSU rRNA遺伝子の一部について塩基配列を決定した。約1400bpの塩基配列をデータベース上の配列と比較したところ、Acaryochloris marinaと約97%の類似性を示した。また、系統解析の結果、分離株はこれまでに海や塩湖で分離されたAcaryochloris属シアノバクテリア3株と、姉妹群を形成した。以上の結果から、この分離株はAcaryochloris属の新種のシアノバクテリアであることが示唆された。これは淡水環境における同属シアノバクテリアの最初の発見であり、この生物が琵琶湖におけるクロロフィルd生産生物の1つであることが明らかとなった。群集構造解析の結果、どのサンプルにも複数のシアノバクテリアや真核藻類葉緑体に由来するSSU rRNA遺伝子が検出され、各湖水サンプルに含まれる光合成微生物の群集構造は季節や深度によって変動することを明らかにした。また、その中に海洋のクロロフィルd生産生物であるAcaryochloris属に近縁なDGGEバンドが複数得られたことから、Acaryochloris属シアノバクテリアが湖心の植物プランクトンとして存在していることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)