2010 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖のクロロフィルd生産生物の実体とクロロフィルdの生態学的意義に関する研究
Project/Area Number |
21247005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮下 英明 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (50323746)
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Keywords | クロロフィルd / 微生物生態 / 琵琶湖 / 生態学的位置 |
Research Abstract |
平成22年度は、平成21年度に引き続き,琵琶湖の北湖の湖心における定期的な層別採水,環境計測を行うとともに、1)平成21年度に層別採水して得た通年のサンプルについてPCR-DGGE解析を行い,湖水中に存在する植物プランクトン群集の通年変動を解析した。また,2)近赤外光を光源としたクロロフィルd生産生物の分離を試みた。さらに,3)分離された藻類の色素組成と分光特性を解析した。その結果,a)琵琶湖北湖の植物プランクトン組成は,季節によって大きく変動し,その組成の特徴は,11月から4月にかけての混合期と5月から10月にかけての成層期に大別できることがわかった。混合期には,珪藻類およびクリプト藻類が優勢して検出されたのに対して,混合期にはシアノバクテリアが優勢した検出された。成層期の水深30m以深に,平成21年度の本研究によって沿岸から分離されたクロロフィルd含有シアノバクテリアAcaryochloris sp.と同一の配列が検出された。このことから,成層期を中心に,淡水性のAcaryochloris sp.が湖心の植物プランクトンとして長期にわたり存在していることが明らかとなった。定量的な評価が必要であるものの,Acaryochloris属シアノバクテリアが琵琶湖におけるクロロフィルd生産生物である可能性がさらに高くなった。また,b)近赤外光を光源とした培養にでは,12株の藻類が分離された。この株の中には,クロロフィルdを含有している藻類は存在しなかったものの,c)最も生育の早かった株について色素組成分析を行ったところ,クロロフィルfが含まれていることを発見した。クロロフィルfは,2010年に報告された新しいクロロフィルで,これを含む藻類が琵琶湖にも存在することがわかった。このクロロフィルは,クロロフィルd同様に近赤外光を利用する一次生産に寄与している可能性が考えられた。
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Research Products
(13 results)