2009 Fiscal Year Annual Research Report
負の張力センサーとして機能するアクチン線維:その物理化学機構の解明
Project/Area Number |
21247021
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
曽我部 正博 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10093428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辰巳 仁史 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20171720)
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Keywords | アクチン線維 / コフィリン / 伸展刺激 / メカノセンサー / 張力依存的結合 / 近接場光 / 一分子観察 |
Research Abstract |
アクチン線維の動態(形成/崩壊)制御は細胞の形態維持や運動を支える中心機構である。アクチン線維は力発生要素であると同時に力によって動態が制御される。コフィリンはアクチン線維を切断する代表的な分子であり、これまでの我々の研究からこの分子はアクチン線維の張力に依存して線維を切断することが分かっている。この分子機構を解明することが本研究の目標である。切断の張力依存性は、コフィリンの結合か切断の、何れかの過程で生じると考えられるが、これまでの予備実験で前者の可能性が濃厚であり、平成21年度の目標は、この可能性を検証することである。当初は生細胞中のアクチンと単離単一アクチン線維への蛍光標識コフィリンの結合測定を試みたが、アクチン線維への結合は極端なall-or-none的傾向を示し、定量化が困難であった。そこで、変性ミオシンでコートしたガラス表面にアクチン線維のネットワークを形成した後、それをミオシンコートしたガラスピペットで引っ掻くことで、アクチン線維の束をピペットとガラス面の間に形成した。このアクチン線維束をガラスピペットを微小操作して伸張することでアクチン線維の張力を制御できるようになった。蛍光染色したアクチン線維束を全反射近接場光で照明しながら蛍光分子アレクサで標識したコフィリンを投与すると、コフィリンのアクチン線維束への結合が1分子レベルで観察できた。様々な張力の元での結合頻度を分析すると、コフィリンの結合確率はアクチン線維の張力に依存して減少することが分かり、これがアクチン線維のコフィリンによる張力依存的な切断の分子機構であることが示唆された。この結果は、アクチン線維は負荷された伸展刺激で生じた張力(構造変化)で切断酵素コフィリンの結合確率を調節し、自らの動態を制御するという、全く新しいメカノトランスダクション機構の存在を明らかにした画期的な発見といえる。
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Research Products
(6 results)