2011 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化と人工環境普及に伴う人類の暑熱適応能の変化に関する研究
Project/Area Number |
21247040
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
栃原 裕 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 教授 (50095907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
大中 忠勝 福岡女子大学, 人間環境学部, 教授 (20112716)
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Keywords | 耐暑性 / 適応 / 体温 / 発汗性 / 皮膚温度感受性 / 熱帯住民 / 上下温度差 |
Research Abstract |
被験者は、形態的特性および最大酸素摂取量を合わせた、日本人(JP)男性10名およびマレーシア人(MY)男性10名を対象とした。実験手順は、気温28℃で10分間座位安静の後、運動の開始とともに気温32℃、湿度70%RHまで上昇させ、55%〓_<2peak>の運動強度で60分間自転車エルゴメータによる運動を行った。運動後30分間座位安静にて回復した。各被験者が給水無し(NHD)と給水有り(HD)(体重当たり3mLの水を4回飲水)の2条件で実験を行った。体重当たり等量の水分を補給した際にMYの方がJPよりも脱水率を抑え、PVの減少が抑えられた。これは心拍数の結果にも反映されており,MYのみ給水条件で低い心拍数を示した。給水条件における総発汗量および尿量の増加がMYでJPに比べてわずかに抑えられる傾向にあり、これにより脱水率が抑えられたと考えられる。給水に伴う発汗量の増加は熱放散反応の亢進と言えるが、本研究では給水無し条件においても全身が十分に濡れている状態にあり、増加分は熱放散の増加につながらない無効発汗と考えられる。MYは給水時の無効発汗の増加を抑え、体液量を保持した結果、皮膚に血流を配分して熱放散を亢進させる可能性を有する。本研究では、運動終了時における平均皮膚温がMYの給水条件で上昇する傾向が見られ、また、回復時の背部皮膚血流量が有意に増加しており、熱放散反応の亢進を反映した可能性が示唆された。 熱帯に生育し、温帯(福岡)に5~61カ月滞在する熱帯住民13名と温帯住民11名の、皮膚温度感受性を比較検討した。熱帯住民は、温帯住民と比較して温感。冷感ともに鈍く、温帯地域への滞在も61カ月以内であれば、その傾向は変化しないことが明らかにされた。 高齢者の温熱感受性に関する研究を、冷涼下と上下温度差がある環境で行った。高齢者は、特に下肢の冷たさの感受性が悪く、低温火傷のリスクが高いことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的 本研究の目的は、地球規模での暑熱適応能の地域差(熱帯地住民と日本人)を、同一の実験場所と実験装置を使用して比較検討し、暑熱環境への順化・脱順化のメカニズムを解明し、地球温暖化が危惧されている今日、冷暖房のような人工環鏡の普及に依存することなく、人類が本来備えている温熱環境適応能を生かした方策を明らかにすることである。熱帯住民を福岡に招聘しての暑熱ストレス実験や福岡に5~61カ月滞在している熱帯住民の皮膚温度感受性実験を実施し、その成果は国際英文誌に掲載された。さらに、高齢者の皮膚温度感受性テストや上下温度差曝露の実験を実施し、その成果も国際英文誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、福岡に5~61カ月滞在している熱帯住民と温帯住民の暑熱反応や寒冷反応についても実験検討する。その成果は、生理人類学会だけでなく国際学会でも発表し、国際英文誌に投稿する予定である。
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Research Products
(10 results)