2012 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイドβの毒性オリゴマーの構造解析に基づいた抗アルツハイマー病薬の開発
Project/Area Number |
21248015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
入江 一浩 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00168535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹腰 清乃理 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10206964)
清水 孝彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (40301791)
村上 一馬 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80571281)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルツハイマー / アミロイドβ / オリゴマー / 毒性ターン / 抗体 / フラボノイド / 凝集抑制 / カテコール |
Research Abstract |
本研究は、アルツハイマー病(AD)の原因物質である42残基のアミロイドβタンパク質(Aβ42)の究極の毒性本体と考えられる毒性オリゴマー(2-4量体)に特徴的な構造に基づき、毒性オリゴマーを特異的に認識する抗体や、その形成を阻害する低分子化合物の開発を目的としている。今年度の主な研究成果は下記の通りである。 1.Aβ42の抗毒性ターン特異抗体の開発と応用 Aβ42の毒性ターン構造(22,23番目におけるターン)を持つペプチドをハプテンとして、これまでに7種の抗体を得ている。昨年3月、これらのうち11A1と命名した抗体を、免疫生物研究所から販売開始した。本抗体を用いたドットブロットにより、Aβ42のオリゴマー形成過程を経時的に検出することに初めて成功した。また、国内外の3つの研究グループとの共同研究によって、市販のAβ抗体では染色されない細胞内Aβを、11A1が染色できることが明らかになった。細胞内Aβの蓄積は、ADの初期段階において認められると考えられており、本抗体はAD病態の初期段階を捉えている可能性が高い。 2.フラボノイド類によるAβ42凝集阻害機構の解析 カテコール構造を有するフラボノイド類によるAβ42の凝集阻害は、自動酸化されて生じたオルトキノンに、主として16番目のリシン残基がマイケル付加することによって起こることを明らかにした。一方、カテコール構造を持たないフラボノイド類のうち、平面性が高いものについては、π-πスタッキングによって凝集を阻害している可能性が考えられた。Aβ42を大腸菌で発現することによって得られた15N標識体と用いて、フラボノイド類とAβ42との相互作用の溶液NMRによる解析を試みたが、本標識体の凝集速度が極めて速く、相互作用部位を正確に同定するためには、金属イオンを完全に除去するなどの工夫が不可欠であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アルツハイマー病(AD)の原因物質である42残基のアミロイドβタンパク(Aβ42)の究極の毒性本体と考えられる毒性オリゴマー(2-4量体)の特徴的な構造に基づき、毒性オリゴマーを特異的に認識する抗体(11A1)の開発に成功し、昨年3月に免疫生物研究所(IBL社)より販売を開始した。本抗体は、野生型Aβ42の凝集に伴って形成される毒性オリゴマーを経時的に検出できるきわめてユニークなものであることが判明した。また、国内外の3つの研究グループとの共同研究によって、市販のAβ抗体では染色されない細胞内Aβを、11A1抗体が染色できることが明らかになった。細胞内Aβの蓄積は、ADの初期段階において認められると考えられており、本抗体はAD病態の初期段階を捉えている可能性が高い。これらの共同研究は、Cell Stem Cell誌、Transl. Psychiatry誌などの一流国際雑誌に共著論文として掲載された。 一方、11A1抗体は、22番目のグルタミン酸が欠失した大阪型変異ペプチドに対しても強く反応することが判明した。本変異ペプチドは毒性オリゴマーの生成量が野生型と比べて顕著に多いことから、本抗体は新しい抗毒性オリゴマー特異抗体として今後の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本研究課題の最終年度に当たることから、昨年までに開発した抗毒性オリゴマー抗体(11A1)のアルツハイマー病(AD)診断ならびにADモデルマウスにおけるAD治療(ワクチン療法)への応用につながる研究を行う。具体的には、AD患者の脳脊髄液中の、毒性オリゴマーを効率的に検出できるサンドイッチELISA法を確立する。また、ワクチン療法は、ADモデルマウス(J20系統)に対して行う。 昨年度までの研究により、ポリフェノール類によるAβ42の凝集阻害機構として、16番目のLys残基による酸化体(オルトキノン)へのマイケル付加体の形成と、Aβ42の分子間βシート形成領域(16-21番目)へのπーπスタッキングの2つがあることが明らかになりつつある。今年度は、非常に高い凝集阻害剤であるアポモルフィン(パーキンソン病の治療薬、ポリフェノールの一種)に着目し、これらの機構をLC-MS-MS解析ならびに溶液NMR法を駆使して検証する。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Stimulation of the amyloidogenic pathway by cytoplasmic superoxide radicals in an Alzheimer's disease mouse model2012
Author(s)
Murakami, K., Murata, N., Noda, Y., Irie, K., Shirasawa, T., Shimizu, T
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Journal Title
Biosci. Biotechnol. Biochem
Volume: 76
Pages: 1098-1103
DOI
Peer Reviewed
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