2009 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞から栄養膜幹細胞へのエピジェネティック制御
Project/Area Number |
21248039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 智 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (90242164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大鐘 潤 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (50313078)
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Keywords | 胚性幹細胞 / 栄養膜細胞 / エピジェネティクス / 細胞分化 |
Research Abstract |
栄養膜細胞はほ乳類に特徴的な細胞で、胚体には寄与せず胎盤を構築する。マウス胚性幹(ES)細胞は、栄養膜細胞系列が出現した後の胚の胚体細胞系列から樹立される細胞株で、通常、分化誘導しても栄養膜細胞には分化しない。しかし近年、無血清培養条件で維持したマウスES細胞をBMP4で処理することにより、効率的に栄養膜細胞への分化転換が誘導されることが発見されている。本研究は、この系を用いることで8日間のBMP4処理が用いられていた。そこで本年度は、まず、栄養膜細胞への分化転換に必要なBMP4処理時間の検討を行った。BMP4処理開始後、24時間おきにBMP4非添加培地に交換し、8日目に栄養膜細胞マーカー遺伝子の発現を解析した。その結果、最初の24時間の処理だけでも栄養膜細胞の分化が見られることが分かった。これは、少なくとも一部の細胞では、24時間のBMP4処理の間に胚体細胞系列から栄養膜細胞系列への分化運命の転換が起こっていることを示す。未分化栄養膜細胞は、FGF4とActivin Aの存在化で栄養膜幹細胞(TS細胞)として継代培養することが可能である。そこで、BMP4処理24時間後にTS細胞培養条件に移して、ES細胞由来TS細胞の樹立を試みた。ライン化の過程で、ドーム状に盛りあがる特徴的な形態を示す細胞集団がBMP4処理群特異的に出現したが、数回の継代を重ねるうちにそれらの細胞は徐々に消滅し、最終的にはBMP4処理の有無にかかわらず同様の形質を持つ細胞集団が得られた。この細胞ではOct4やNanogといったES細胞のマーカー遺伝子の発現が認められたが、その維持にUFやその他のサイトカインは必要とせず、TS細胞やES細胞とは異なる性質を有することが明らかとなった。DNAマイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析により、これらの細胞は、ES細胞よりも、エピブラストに由来する幹細胞株(EpiSC)により近い性質を有する存在であることが判明した。
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Research Products
(1 results)