2010 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞から栄養膜幹細胞へのエピジェネティック制御
Project/Area Number |
21248039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 智 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (90242164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大鐘 潤 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (50313078)
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Keywords | 胚性幹細胞 / 栄養膜細胞 / エピジェネティクス / 細胞分化 / 分化転換 |
Research Abstract |
栄養膜細胞はほ乳類に特徴的な細胞で、胚体には寄与せず胎盤を構築する。マウス胚性幹細胞(ESC)は、栄養膜細胞系列が出現した後の胚の胚体細胞系列から樹立される細胞株で、分化誘導しても栄養膜細胞には分化しない。しかし近年、無血清培養条件で維持したマウスES細胞をBMP4で処理することにより、効率的に栄養膜細胞への分化転換が誘導されることが発見されている。本研究は、この系による分化転換の機序の解明、および、栄養膜細胞分化におけるエピゲノム変化とその制御に関する知見を得ることを目的とする。本年度は、昨年度の研究でBMP4処理後得られた細胞集団の性状解析を主に行った。この細胞は、幹細胞の簡易的な判別方法であるアルカリホスファターゼ活性が陽性で、マウス原始外胚葉由来幹細胞(EpiSC)のマーカー遺伝子であるOct4、Eomes、Tなどの遺伝子を発現していた。さらに網羅的な遺伝子発現解析によっても、その遺伝子発現パターンがESCよりもEpiSCに類似していることが判明した。EpiSCはBMP4処理によって栄養膜細胞へ分化誘導できることを踏まえ、得られた細胞集団をBMP4処理したところ、栄養膜細胞様の遺伝子発現と形態を示す細胞に分化した。これは、ESCから栄養膜細胞への分化転換過程に、EpiSC様の状態を経る経路が存在することを示している。また、免疫染色法により、分化転換誘導後の細胞集団におけるマーカータンパク質の発現解析を行ったところ、BMP4依存的にEpiSC様細胞が確認されたのに加え、混在する細胞の中に栄養膜幹細胞(TSC)様の細胞集団も認められた。すなわち、BMP4処理による分化転換の初期には、EpiSC様細胞と同時にTSC様細胞も存在していることが明らかとなった。
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