Research Abstract |
本課題では,極短パルスレーザー照射により四波混合過程で生じる微弱発光を検出し、対象物の構造のみならず対象物の分光学的性質を明らかとする、全く新しい光学理論に基づいた非線形光学顕微鏡、誘導パラメトリック発光顕微鏡(SPE顕微鏡)を用いて、従来不可能であった染色体の完全無染色での三次元観察を行い,蛍光抗体や染色剤の影響をまったく受けない状態での染色体構造の動的変化を可視化し、詳細が不明である細胞分裂時における核・染色体の構造変化について、これまでにない知見を得ることを目的としている。平成21年度は,SPE顕微鏡を用いて生きた細胞の三次元動態解析を行うための観察条件についてタバコBY-2細胞を用いて検討した。その結果,2mW以下の照射レーザーパワーでは,シグナル強度が弱く,シグナル取得に時間がかかるため,動態観察が難しいこと。5mW以上では,観察に要する時間は短くなるが,細胞分裂の進行に遅れが見られ,20mW以上では細胞分裂が正常に終了しないことが判った。そこで,SPE顕微鏡の光学系を改良し,高感度化を図った。具体的には,装置に4f光学系を加え,分散の影響を抑えるため新たな分散補償器を作成した。4f光学系は回折格子によりレーザーを各波長成分に分け,液晶空間光変調器により各成分の時間的分散を補正するもので,信号強度,ノイズの減少,コントラスト比の向上が期待される。その結果,これまで明瞭な像を得るためには7mW程度のレーザーパワーが必要であったものが,4mWでも十分に明瞭な像を得ることに成功した。そこで次に,本装置を用いて,染色体を含む全細胞内構造をXYZの座標に基づき細胞内空間にマッピングして、三次元マップを構築した。その結果,分裂過程の核、核小体、細胞膜など細胞内部の構造情報が鮮明に得られ,染色体動態の低侵襲、高感度観察の可能性が示唆された。
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