2011 Fiscal Year Annual Research Report
触媒的な位置選択的官能基化を基盤とする精密有機合成
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21249001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川端 猛夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (50214680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古田 巧 京都大学, 化学研究所, 准教授 (30336656)
吉村 智之 京都大学, 化学研究所, 助教 (20432320)
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Keywords | 位置選択性 / 有機触媒 / アシル化 / 配糖体 / アルドール反応 / 全合成 / 化学選択性 / 分子認識 |
Research Abstract |
我々は2007年にグルコース誘導体の位置選択的アシル化を発表した。この方法ではグルコース誘導体の4つの水酸基の内、反応性の低い第2級水酸基上で排他的に反応を起こし、基質本来の反応性とは独立したほぼ完全な触媒主導の選択性を発現できる点が従来法にはない特徴である(JACS.2007,129,12890)。さらに本法の一般性獲得と天然物合成に向けた研究を行い、アシル化剤として種々の官能基を持つ酸無水物を用い、4位選択性が高度に保持されたグルコピラノースへの官能基導入法の開発に成功した。(JOC.2009,74,8802、Eur.J.Org.Chem.2010,5,827-831)。23年度は本法を用いる配糖体天然物ellagitannin類の全合成を行った。Ellagitannin類は1800年代から知られている配糖体天然物であるが、最近、その抗ウイルス活性、抗腫瘍活性が再注目され、合成研究が盛んに行われている。Ellagitannin類の特徴はグルコース4,6位に軸性不斉を持つビフェニル型のHHDP基を有する点である。Emagitannin類のひとつであるtellimagrmdin IIの全合成を行った。従来、4,6位へのHHDP基の導入はグルコピラノース部位の保護、脱保護を駆使して行われてきたが、本研究で開発した位置選択的アシル化触媒を用い、無保護のグルコピラノースに一気に4,6位ガロイル化を行い、残った2,3位に他のガロイル基の導入、4,6位のガロイル基の酸化的カップリング、アノマー位へのガロイル基の導入により、tellimagrandin IIの短段階全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
配糖体天然物tellimagrandin IIの全合成を達成した。一方でグルコピラノースの触媒的位置選択的スルポニル化は達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
配糖体天然物のcoriarin Aはtellimagrandinが2量化した構造を持つ巨大な配糖体天然物で、2つのグルコース部位とアグリコン部から成っている。2つのグルコース部位のそれぞれ4,6位に2つのHHDP基を有している。今後はこのcoriarin Aの触媒的位置選択な短段階全合成を検討する。即ち、8つの遊離水酸基を持つ2つのグルコース部位に4つのガロイル基の一段階での位置選択的導入を鍵工程として、coriarin Aの全合成を鋭意検討する。また、グルコピラノースの触媒的位置選択的スルホニル化を引き続き検討する。
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