2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21249032
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柳 雄介 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (40182365)
|
Keywords | 麻疹ウイルス / 動物モデル / SLAM / 免疫抑制 |
Research Abstract |
麻疹は発熱・発疹を主症状とし、免疫抑制や脳炎も起こす重要なウイルス感染症である。ウイルス感染症の病態解明や抗ウイルス薬開発には、動物モデルが不可欠である。麻疹ウイルスはヒト免疫細胞に発現するSLAMを受容体として細胞に感染するので、マウスのSLAM分子をヒト分子で置換したSLAMノックインマウスを作製した。しかし、麻疹ウイルスがマウスで効率良く増殖するには、さらにマウスのインターフェロン応答を抑える必要があることがわかった。麻疹ウイルスのように、ヒトを自然宿主とするウイルスは、ヒトの免疫応答には対抗できるが、本来の宿主でない動物の免疫応答には必ずしも対抗できない。これがマウスを使った動物実験を進める上での障害となる。センダイウイルスはマウスで効率よく増殖し、マウスに致死的な肺炎を引き起こす。そのセンダイウイルスがコードするC蛋白質(SeV-C)はマウスのインターフェロン応答を抑制することが知られている。われわれは、麻疹ウイルスが感染したマウスの培養細胞でのみ、SeV-Cが発現する実験系を確立した。これはCreと呼ばれる酵素がloxPという特異的なDNA配列を認識してDNAを組換える性質を利用したものであり、(1)Creを発現する麻疹ウイルスと、(2)SeV-Cをコードする遺伝子の上流にloxP配列を有するマウス培養細胞を遺伝子改変技術で作製することで実現した。これにより、感染細胞特異的にウイルス抵抗性を抑制することが可能になった。感染実験では、SeV-Cが発現することで麻疹ウイルスの増殖が約100倍上昇した。一方、麻疹ウイルスに感染していないマウス細胞はSeV-Cを発現しないため、正常なインターフェロン応答を示す。今回確立したシステムをもとにした遺伝子改変マウスの作製に現在取りかかっており、SLAMノックインマウスと交配することにより、詳細な麻疹の病態解析を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗インターフェロン活性を持つセンダイウイルスC蛋白質を麻疹ウイルス感染細胞特異的に発現させることで麻疹ウイルスがマウス細胞で効率良く増殖できることを明らかにした。現在、この知見に基づいてセンダイウイルスC蛋白質発現トランスジェニックマウスの作製を進めている。したがって、当初の計画通り研究は進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画通り、センダイウイルスC蛋白質発現トランスジェニッククマウスの作製を進め、受容体発現マウスと交配することにより、麻疹ウイルス感染のより良いモデル動物の開発と麻疹の病態解明を目指す。さらに、感染に伴いT細胞、樹状細胞に認められる機能異常の原因を、細胞表面抗原の発現解析やマイクロアレーによる遺伝子解析を行うことにより、さらに検討する。
|