2011 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病のすべてがわかる和漢薬:発病機序の分子的解明から新規抗うつ薬開発まで
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21249047
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
東田 道久 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (20207525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 かつ子 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (50225570)
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Keywords | 補中益気湯 / MRI / 薬物感受性 / 脳基底部 / 初代培養細胞 / うつ病 / セロトニン2C受容体 |
Research Abstract |
和漢薬の治療概念に基づいてうつ病を細分類し、その関連する生体内分子の発見と対応する治療薬の開発をめざして本研究を立ち上げた。和漢薬はテーラーメイド医療を実践している。そこで、モデル動物により抗うつ効果を実証している補中益気湯(補中)を過換気症候群の治療に用いている感受性ヒトに服用してもらい、脳 MRI データーを得た。補中は脳全体を抑制的に制御していた。その結果を受けて、うつ病モデルラットを作製し、行動実験により補中感受性を評価した後、感受性と非感受性の両者に補中を投与し、MRI 画像を得た。非感受性脳では補中投与により全体的に脳が活性化した画像が得られたが、感受性脳では補中はヒトと同じく抑制的に作用していた。部位別に詳細な検討を加えたところ、補中は脳の基底部においては活性化作用を有する可能性を示す知見が得られた。うつ状態は脳の過剰反応によって生ずるとする最近の知見も考慮すると、補中感受性脳では、視床下部などの脳基底部に素早く反応し、その後は神経支配やホルモン分泌等を介して脳全体を鎮静させているとの仮説が想定できる。一方、非感受性脳では補中が有する活性化作用が先行してしまい、脳全体が活性化されるのかもしれない。この仮説に基づいて、連関性等に関する詳細なデーター解析を行っている。本年度は上述のほかに、環境性うつと関連する可能性のあるBNIP-3 mRNAの脳内発現部位を検討し、海馬や背側視床後核に多いことも見出した。加えて、初代培養細胞の培養日数に伴う各種発現遺伝子の量的変化や、それを指標にしたBNIP-3他の機能の推定、薬物作用の影響なとの検討を行い、また黄耆による低分子RNA発現についての検討、本態性うつに関与する脳内因子の同定、5-HT2C受容体活性化作用を有する成分の同定に関する研究など、和漢薬とうつに関する様々な研究を幅広く展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画書の記載通りに、おおむね順調に研究が進んでいる。本年度は成果を米国神経科学会において発表するなど、海外の研究者との交流も行って、Wakan-yakuを国際言語とする為の礎を築きつつあるものと自負している。学会発表は順調に行ってはいるが、論文にまとめることが少々遅れている。まとめのための詰めの実験を推進する必要はあった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って研究を推進する。上述のように、まとめの段階に入っている知見に関しては、節目を作るために論文発表を推進する。小動物を用いたMRIについては、現時点では外部委託で行っており、委託先の好意により破格の安価で使用させていただいているものの、遠方(東京、神戸)でもあり、使用頻度や使い勝手の点で制約が多い。大学内にも感度の低いものはあるが、学内の動物管理上の制限から現状では使用が難しい。自前での装置の保有で研究を飛躍的に推進させることが出来るので、次の段階としてそれが実現できるようにするため、より一層の実績を蓄積させることが肝要と考える。また、和漢薬だからこそ可能であるヒトを用いた実験に関しても、諸条件に慎重に配慮しながら推進する。
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Research Products
(6 results)