2011 Fiscal Year Annual Research Report
革新的な三次元培養装置を用いた血管化ヒト膵島再構成法の開発
Project/Area Number |
21249071
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
谷口 英樹 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70292555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 允文 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80404995)
上野 康晴 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60375235)
小池 直人 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50301081)
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Keywords | 幹細胞 / iPS細胞 / 糖尿病 / 膵島移植 / 三次元培養 |
Research Abstract |
前年度に我々が開発したヒト血管ネットワーク再構成技術を用いて、ヒト血管内皮細胞・間葉系幹細胞の存在下で膵β細胞の三次元培養を実施した。尚、ヒト血管内皮細胞、および膵β細胞は、各々レトロウイルスベクターによりEGFP(Enhanced Green Fluorescence Protein)、KO(Kusabira Orange)ラベルにより蛍光標識を行い、細胞を可視化した状態で解析を実施した。培養二日後にはヒト血管細胞よりなる管腔構造の形成が確認された。培養四日後には、膵島スフェロイド周辺へ血管様構造が取り囲む形態を取る三次元構造体の創出に成功した。In vitroにおいて形成された三次元的な血管化膵島スフェロイドを、免疫不全マウスクラニアルウインドウ内へ移植した。驚くべきことに、移植早期の段階で移植片に鮮紅色の血液が還流されることが肉眼的に確認された。さらに、高速ライブイメージング共焦点顕微鏡による追尾定点観測の結果から、移植10日から20日前後には、膵β細胞の増殖と自律的な組織化が生じ、内部にヒト血管ネットワークを有する膵島様構造体へと成熟することが判明した。 免疫不全マウスの生体内において形成された膵島様構造体内部のヒト血管ネットワークが、血流を伴う機能的な血管へと成熟しているか否かを確認する目的で,レシピエントマウスの尾静脈から蛍光標識デキストランの静脈内投与を行った。形成された膵島様構造体内部のヒト血管ネットワークは、ホスト血管と接合し、十分な血液還流を受ける機能血管へと成熟していることが判明した。さらに、移植後30日目の移植片の免疫組織学的解析から、膵島様構造体内におけるインスリン発現が確認され、また、コラーゲンIVやラミニンVなどの基底膜成分に裏打ちされた血管網を有することが明らかとなった。これらの膵島様構造体は、成体内に存在する正常膵島と類似の組織構築を有することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト膵β細胞株の樹立について、研究計画の変更を必要とした。すなわち、ヒト膵β細胞株の樹立については、最近、Scharfmann Rらによってヒト胎児膵臓からのヒト膵β細胞株の樹立が報告された(Ravassard P et al.,J Clin Invest. 2011;121(9):3589-3597,)。この報告によると、以前、Narushima Mらによって報告された手法(Nat Biotechnol.2005;23(10):1274-1282)および、独自の方法によっても成体膵島からヒト膵β細胞株を樹立することは出来なかったと報告されている。我々も、米ベイラー大・松本慎一教授との共同研究により成体膵島を入手しヒト膵β細胞株を樹立することを試みたが、Scharfmann Rらと同様、成体膵島からはヒトβ細胞株を樹立することは出来なかった。我が国では、ヒト胎児膵臓を対象とした研究を推進していくことは極めて困難であることから、現在、ヒトiPS細胞の膵β細胞への分化誘導を試み、既に膵幹細胞マーカーであるPdx1の発現誘導およびインスリン、グルカゴンの発現誘導を確認している。今後、ヒトips細胞由来膵臓系列細胞を用いてヒト膵島スフェロイドを再構成し、これらの糖尿病モデルマウスにおける治療効果を検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により創出された機能的なヒト血管網を有する三次元膵島スフェロイドの治療効果について、免疫不全糖尿病モデルマウスへの移植実験により実証していく予定である。これらの技術基盤が確立することにより、人為的に再構築した膵島スフェロイドを用いた新たな膵島移植法の確立が期待される。 また、従来より臨床膵島移植における解決課題として、膵島内の血管構造の喪失により移植効率が極めて低いことが挙げられている。このために、1人の患者の治療に複数ドナーからの膵臓摘出が必要であるとされている。そこで、本研究で新たに創出されたヒト血管ネットワーク再構成法を用いて、現行の膵島移植の治療成績の向上を目指した技術開発を進めていくことも重要な方向性であると考えている。すなわち、本技術を臨床的に分離されたヒト膵島の血管化へ応用することにより、移植後早期の膵島の再血管化を効果的に誘導することにより、移植効率の大幅な向上を図ることを検討していく予定である
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Research Products
(14 results)