2011 Fiscal Year Annual Research Report
仏伊独における移住家事・介護労働者-就労実態、制度、地位をめぐる交渉
Project/Area Number |
21252001
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊藤 るり 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (80184703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定松 文 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (40282892)
小ヶ谷 千穂 横浜国立大学, 大学院・都市イノベーション研究院, 准教授 (00401688)
園部 裕子 香川大学, 経済学部, 准教授 (20452667)
中力 えり 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (50386520)
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Keywords | 移民 / ジェンダー / ケア / 労働 / ヨーロッパ |
Research Abstract |
最終年度を迎え、補充調査を実施するとともに、成果を暫定的にまとめ、その全容を捉えるため、外部の専門家も招いて、ワークショップを開催した。主な知見として、以下を挙げることができる。 フランスでは2005年以降、「社会的結束」の名のもと、「対人サービス」振興政策が進められてきた。パリ市における調査では、同政策のもとで、個人家庭での無申告労働から申告労働への転換や、「職業経験認定制度(VAE)」などを通した就労条件改善への試みもみられた。だが、雇用の質は依然として劣悪である。他方で、申告労働に基づく労働契約、個人家庭賃金労働者の労働協約、労働組合、労働裁判所の存在は、移住家事・介護労働者の地位改善において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 ドイツには、新規EU加盟国に限定したものだが、移住家事労働者受け入れプログラムがある。しかし、非正規滞在者も少なくない。支援は開始されたばかりで、非正規滞在者の地位正規化の条件は相対的に厳しい。イタリアは割当制度による家族援助者を受け入れており、2002年以降、非正規滞在の移住家事・介護労働者を優先的に正規化してきた。ドイツと同様、新規EU加盟国からの移住女性の流入が拡大しているが、介護労働の職業化に向けた志向性は希薄といえる。 また、フィリピン人家事・介護労働者の横断的調査では、ローマに比べ、パリでは非正規滞在者が極端に多いこと、ローマではフィリピンの海外雇用政策に先駆けて移住者のネットワークが形成されてきたこと、パリではフィリピン人家事・介護労働者がアフリカ出身労働者よりも賃金が一般に高く、移住家事・介護労働市場の階層化が進んでいることなどがわかった。 ヨーロッパにおけるケアのグローバル化を、非正規滞在の移住家事・介護労働者の実態に一定程度踏み込んで調査を行い、その地位の改善に資する諸条件の一端を解明できたところに、本研究の意義がある。
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Research Products
(6 results)