Research Abstract |
昨年度に引き続き,Coral Triangle領域の特性を高精度で表現可能な「大気-陸域-沿岸域-海洋」物理流動・水循環統合モデル,陸源負荷評価モデル,炭酸系パラメータを含む物質循環・低次生態系沿岸海洋モデルの開発を進めた.また,幼生分散シミュレーション解析から得られるconnectivity matrixに基づいて,sourceサイドとsinkサイドの両面から海洋保護区(MPA)候補地を同定する評価スキームを検討した.それらと並行して,沖縄を含むCoralTriangle海域内でのいくつかの海域において,これらのモデルの検証のための現地データを得るための調査を行った.また,CO_2吸収・放出特性を把握するため,インドネシアのJakarta~Natuna島間,Jakarta~Banggai島間の海域で観測を実施した.さらに,インドネシアを対象に,同国の複数の研究機関との共同で,多数の水温計や水位計を設置し運用するための体制構築を進めた.一方,Coral Triangle海域および周辺海域の生物多様性・生態系機能・生態系サービスの変動様式の解析について,一昨年度に引き続き,インドネシアでの現地調査および現地の専門家への聞き取り調査を行った.また,フィリピン全域,中国・海南島と八重山諸島において海草の対象種5種のサンプリングを行い,そのうち,リュウキュウスガモとウミショウブに関して,マイクロサテライトマーカーを用いて集団遺伝学的解析を行った.その結果,いずれの種でも主に有性繁殖で藻場を維持していることが明らかとなった.遺伝的多様性については,フィリピンの集団が最も高く,八重山集団は低いことは分かった.また,集団間の遺伝構造を評価したところ,両種とも2グループに分けられたが,これはこの地域の海流パターンと関連するものと推定された.
|