2011 Fiscal Year Annual Research Report
バイカル湖表層メタンハイドレートの多相形成環境の解明
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21254006
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 信夫 北見工業大学, 工学部, 教授 (20108187)
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Keywords | 国際研究者交流 / 日本:ロシア:ベルギー / バイカル湖 / メタンハイドレート / メタンシープ / 湖底堆積物 / 溶存ガス / 間隙水化学 |
Research Abstract |
世界で唯一、湖底にメタンハイドレートを産する淡水湖「バイカル湖」は、ハイドレート包有ガスの組成および起源が採取場所により異なり、さらに、生成ハイドレートの結晶構造も変化するという複雑な多様性を有することが明らかにされている。本研究は、こうした多様性を把握した上でハイドレート生成メカニズムを理解するための基盤となる「表層ハイドレートのキャラクタリゼーション・マップ」の作成を目指している。 本年度は、ロシア科学アカデミーシベリア支部陸水学研究所(グラチェフ所長)と共同で、ロシア調査船ベレシャーギン号を用いて2011年6月19日~7月3日にバイカル湖中央湖盆および南湖盆においてフィールド調査を行った。これまでに得られた音波探査(サイドスキャンソナー探査、マルチビームプロファイラー探査、地震探査等)データを参照しつつ、音響探査を実施しながら、選定された表層ハイドレートの生成候補地点で重力コアラーによる掘削を行い、合計約194mの湖底堆積物表層コアを採取し、5つの新しいサイトからガスハイドレートを発見した。本調査中の採取コアのうち、ガスハイドレートを含むコアは、合計11本であった。現場では、コア採取後直ちにコア層位が観察され、ヘッドスペース法によりガスサンプルが、スクウィーザーおよび遠心分離器を用いて間隙水サンプルが収集された。調査船に搬入したガスクロマトグラフ測定装置を用いた現場解析からは、メタンハイドレート包有ガスおよび堆積物間隙水溶存ガスの組成が明らかになり、さらに数本の湖底コア解析からは、湖底表層部の溶存ガス濃度プロファイルが得られた。 フィールド調査後の研究室内コア解析については、現在北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター(旧未利用エネルギー研究センター)等において、主として堆積物間隙水の化学分析と、間隙水溶存ガスの組成および同位体解析等が行われている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度調査では、南湖盆および中央湖盆において、これまでに発見済みの表層ガスハイドレート産出サイトを確認したに留まったが、第2~第3年度では中央湖盆において、合計10箇所の新しい産出サイトを発見しており、そのうち6箇所がククイキャニオンに集中していることを明らかにした。南湖盆と中央湖盆の全体像は概ね明らかになってきており、来年度(最終年度)の調査・測定解析によってハイドレートの広域分布特性を解明できるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については、陸水学研究所(ロシア・イルクーツク市)およびゲント大学(ベルギー・ゲント市)との国際共同研究を基本として調査研究を進めることに変更は無い。 本年度から特に悪化してきたことは、ロシアにおける出入国通関の問題である。フィールド参加人員の通関は問題ないが、日本からロシアに送った貨物のロシア入国通関や、ロシアから日本に送る分析用サンプルのロシア出国通関に非常に長く時間がかかる。これに対して、貨物・サンプルを小口に分けて物品が全て一度に通関事務所に止められないようにすることと、現地でのサンプル処理・解析項目を増やして、輸送サンプル量を減らすことで対処している。
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