Research Abstract |
(1)2010年度代表者が主宰する日中韓露4か国共同研究体制により,ハイボリュームエアーサンプラーで毎季節2週間ずつ一斉連続捕集した浮遊粒子状物質のうち,わが国4都市(金沢,東京,札幌,北九州)及び中国4都市(北京,瀋陽,上海,福州)の試料について,PAH,NPAH濃度を超高感度HPLC-蛍光/化学発光検出法により分析した。本年度に測定が終了した都市のうち,金沢市の過去12年間(1999~2010年度)の結果に基づいて,汚染の推移を解析した。 (2)12年間を通して,常にPAH濃度はNPAH濃度より高く,冬高夏低の季節変動を呈していた。 (3)大気中PAH濃度を見ると,夏季は1/4.4,冬季は1/2.8に減少した。一方,NPAH濃度を見ると,夏季は1/8.2,冬季は1/7.9に減少し,特にNPAHの減少が顕著であった。 (4)発見した発生源マーカー[NPAH]/[PAH]を見ると,12年間に顕著な減少が見られた。 (5)以上より,金沢市の大気汚染は過去12年間に顕著に改善しており,とりわけNPAH濃度の減少が顕著であった。この間の金沢市の自動車登録台数は微増の一方,全自動車に占めるディーゼル車の割合は微減したことを含めると,上述の特にNPAHで顕著な大気汚染の軽減は,これまで金沢市では自動車が大気中PAH,NPAHの主要な発生源とされてきたが,排ガス規制の強化及び自動車の性能の向上によって,それらの排出量,とりわけディーゼルが主要排出源であったNPAHが減少したためと考えられた。 (6)現在,分析が終了していない都市の試料についてPAH,NPAH分析を進めるとともに,金沢市以外の旨都市についても大気中PAH,NPAH濃度の推移と変化の要因を解析し,最近の東アジアの大気汚染の変化を明らかにする。
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