2011 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク社会に有用な「覚え易く、忘れにくく、更に覗き見にも強い画像認証方式」
Project/Area Number |
21300021
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
西垣 正勝 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (20283335)
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Keywords | ユーザ認証 / 画像認証 / スキーマ / 不鮮明化画像 |
Research Abstract |
本研究は、人間の認知の特性である「スキーマ」の仕組みを利用することで、ユーザの記憶負荷軽減と覗き見攻撃の困難化という、矛盾する課題を両立させ得る画像認証方式を実現するものである。本方式の最大の特徴は、オリジナル画像の代わりに、オリジナル画像に対してモザイク化等の不鮮明化処理を施した一見無意味な画像(以下,不鮮明化画像)をパス画像として使用することにある。人間は画像を記憶することに優れているという特性を有するものの、それは有意味な画像を記憶する場合に限ってのことであり、無意味に見える(意味を言語化できない)画像を記憶することは難しい。ゆえに、他人のパス画像(不鮮明化画像)を覗き見て記憶することは、攻撃者にとって困難な作業となる。一方、正規ユーザにはパス画像登録時に不鮮明化画像とともにオリジナル画像を見ることが許される。これにより、正規ユーザの脳の中でオリジナル画像と不鮮明化画像の両者が関連付けられ、正規ユーザは不鮮明化されたパス画像の意味を簡単に認識することができる。 ここで問題となるのが、画像の不鮮明度である。不鮮明化の強度が低いと、スキーマを持たない攻撃者も不鮮明化画像からオリジナル画像が類推できてしまう。よって本方式は、ユーザにある程度以上の不鮮明化画像に対する認識能力を要求する。そこで本年度は、オリジナル画像を類推するというタスクに対し、不鮮明化の強度をどこまで高めることができるかを競うようなゲームを提供することにより、ユーザが楽しんで自らの不鮮明化画像認識能力を高めるような仕組みを実現するという方法を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人間の認知特性を利用した画像認証に対して、ゲームに対するインセンティブという人間の心理を導入することによって、不鮮明画像認証方式を更に進化させるアイデアの着想へと至った点は、当初の計画以上の進展である。ただし、そこに時間が費やされた分、不鮮明化画像に認知に関する実証実験の時間が少なくなってしまった。両者を総合すると、達成度は「概ね順調に進展している」に区分されると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
近年のスマートフォンやタブレット携帯端末の急激な普及に鑑み、不鮮明化画像認証方式の携帯デバイスへの応用に関する検討を継続して進めていく。また、昨年度からの研究を通じ、不鮮明化画像だからこそ可能な種々の応用が存在することが分かってきた。例えば、不鮮明化画像に対してユーザは「この画像は何の画像なのだろう」という興味を感じる。また、不鮮明化される前の画像が何かを問うクイズに対して、ユーザは「是非正解を見つけたい」というインセンティブを感じる。このような「不鮮明化画像に対するユーザの興味の誘引」を利用した新たな画像認証方式の実現に関しても引き続き検討をしていく。
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