Research Abstract |
本課題の目的は,病院情報システム内に分散的に蓄積された医療行為の時系列的記録から,各疾患の診療過程に関する時系列的パターンあるいは時系列モデリングを抽出し,診療行為の工程管理(クリティカルパス)を支援するための基盤的技術を研究,さらに病院情報システムへの実装し,手法を評価を行うことにある。本年度は,前年度から引き続き,基幹系情報システムから解析に必要なデータを抽出するシステムを用いてデータを蓄積するとともに,時系列マイニングの方法を開発し,蓄積されたデータを用いて,データマイニングを進めた。さらに,得られた知見をもとに,プロセス管理の評価・修正を試みた。 具体的には,時系列変化を軌跡としてとらえる高次元軌跡マイニング,時系列文字情報から新規出現過程の検出を行うテキストマイニング手法の開発,蓄積されたデータの一部を用いて,時系列マイニング技術の適用を試みた(担当:平野,阿部)。得られたパターンの評価を進めた(担当:津本)。成果は次の三つにまとめられる:(1)オーダ数に関する時系列に軌跡マイニングの方法を適用し,オーダ数の時間的ふるまいから病院全体の動態,病院全体のプロセス管理がどうあるべきかについての指針が得られた。(2)系列マイニングの手法から,各診療科におけるオーダの出し方に特徴があることがわかり,診療科毎のプロセス管理がどうあるべきかについての指針が得られた。(3)クリティカルパスによって診療プロセスが進捗管理されていない疾患の看護オーダ数の時系列変化についてマイニング手法を適用することで,看護のオーダが,症例共通,症例固有のものに分類でき,さらに,症例固有のものについては,症例の重症度によるオーダのグループ化が可能であり,しかもその各グループについての適用期間についてのパターンが抽出できた。(4)クリニカルパスによって進捗管理している疾患に関しては,パスで設定されている診療行為の実効性を評価できるとともに,本来パス上に設定されていないが,必要である診療行為の存在を発見し,クリニカルパスの更新の必要性をデータから検証できた。
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