Research Abstract |
本年度はマルチモーダル説得エージェント開発のための要素技術であるマルチエージェント説得技術とそれを応用するためのプロトタイプシステム開発に取り組んだ.マルチエージェント説得技術に関しては,集団同一視とエージェント数の効果を調査し,ユーザを効果的に説得できる条件について議論した.実験においてユーザは砂漠遭難課題に取り組み,アイテムを選択する.エージェントはユーザが選択したアイテムとは異なるアイテムを推薦し,その推薦が受け入れられた回数を説得成功回数として計測した.このとき,集団に対する帰属感覚である集団同一視の強化の有無とエージェントの数を組み合わせて実験条件を設定した.集団同一視を強化する方法として,ユーザが選択したアイテムに対してエージェントが賛同する方法を採用した.説得効果を分析したところ,集団同一視を強化するとエージェント数の多い方が説得効果は高いことが示唆された.特に,エージェント数が3体の場合に集団同一視を強化した時が最も説得効果が高かった.また,アンケート調査の結果,本研究で用いた集団同一視を強化する方法によってユーザの集団同一視が高められていることが示され,この手法の有効性が支持された. プロトタイプシステムに関しては,デジタルカメラの購入を説得するショッピングサイトを開発した.本システムでは,説得の過程を興味取得フェーズ,説得フェーズ,確認フェーズの3段階から構成する.ユーザの興味と説得する商品の属性の違いを分析した後,ユーザが興味を持つ商品の優位性を最小化し,説得する商品の優位性を最大化するように説得を行う.被験者実験では9台のデジタルカメラを用意し,20名の被験者に対して特定のカメラを購入するように説得した.その結果,3名に対してのみ説得が成功するという結果であった.今後はこのプロトタイプをベースとし,これまで開発した言語的説得技術,非言語的説得技術,マルチエージェント説得技術を組み込み,その説得性能の向上を目指す.
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