2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21300119
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
吉村 由美子 National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities, 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (10291907)
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Keywords | 大脳皮質 / 視覚野 / 錐体細胞 / 発達 / 暗室飼育 / 興奮性結合 / 抑制性結合 / ラット |
Research Abstract |
これまでに我々は、大脳皮質視覚野2/3層錐体細胞間の神経結合を解析し、錐体細胞の軸索が抑制性細胞の細胞体を介さずに、抑制性細胞の軸索終末を直接活性化し、伝達物質を放出させるという全く新しいタイプの抑制性神経回路を見出した。本年度は、ラット一次視覚野スライス標本を用いて、この抑制性結合と、錐体細胞間に通常みられる興奮性シナプス結合の発達と視覚体験依存性について調べた。近傍にある2個の2/3層錐体細胞からホールセル記録を行い、両細胞間のシナプス結合を調べた結果、錐体細胞間抑制性シナプス後電流(IPSC)が興奮性シナプス後電流(EPSC)よりやや高い頻度で観察された。EPSCおよびIPSCは、発達初期(生後14-17日齢)の視覚野では発達後期(生後21-25日齢)に比べて低頻度でしか観察されなかった。興奮性結合と抑制性結合の発達は共に視覚体験に依存したが、その影響の方向は逆であった。興奮性結合の形成は生後直後からの発達後期までの暗室飼育により抑制され、結合がみられたペアでもEPSCの振幅は正常視覚環境飼育に比べて小さかった。一方、錐体細胞間IPSCは、正常視覚環境飼育より、暗室飼育の方が高頻度で観察され、その平均振幅も大きかった。以上の結果は、視覚入力がない場合には2/3層において、錐体細胞間の興奮性結合の発達は抑えられ、錐体細胞間の抑制性結合の発達は促進されることを示唆している。言い換えると、視覚入力を受けると発達と共に興奮性結合が抑制性結合に比べて優位になり、視覚体験により視覚野細胞の視覚反応が強化されると考えられる。
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