2009 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質における神経細胞の発生および維持に関与する分子機構の解析
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21300122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞田 佳門 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 准教授 (50431896)
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Keywords | 大脳新皮質 / 神経新生 / 神経細胞移動 / 神経細胞保護 / LKB1 |
Research Abstract |
LKB1は、様々な動物種の初期胚の極性を制御することが知られる極性分子であり、発生期の大脳新皮質において、神経細胞の移動および成熟に重要な役割を果たす。私共は神経細胞移動におけるLKB1の下流シグナリングを精査した。大脳新皮質において、神経細胞が移動する際は、(1)進行方向に先導突起が伸長し、(2)中心体が先導突起内を移動し、(3)核が中心体の方向に移動する、というサイクルを繰り返して移動する。この移動プロセスにおいてLKB1は、中心体の前方への移動を司り、神経細胞移動に必須であることを見出した。さらに、先導突起の先端部においてLKB1がGSK3βと呼ばれるSer/Thrキナーゼをリン酸化して不活性化することを明らかにした。この結果として、APCと呼ばれる微小管結合タンパク質が微小管の先端に結合し、微小管を細胞膜にアンカーする。これにより、微小管が進行方向に引っ張り上げられ、同時に、微小管の重合中心である「中心体」が進行方向に移動する、というモデルを提唱できた。LKB1の機能を阻害すると、上述した細胞内現象が観察できなくなり、中心体の移動が停滞する。さらに重要なことに、神経細胞の移動が停止する。これらの研究成果は、中心体が移動するために必要な分子基盤を明らかにしたものであるのと同時に、中心体の前方移動が神経細胞の移動において中心的な役割を果たすことを世界に先駆けて示した知見である。
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