2010 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質における神経細胞の発生および維持に関与する分子機構の解析
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21300122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞田 佳門 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (50431896)
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Keywords | 大脳新皮質 / 神経新生 / 神経細胞移動 / 神経細胞保護 |
Research Abstract |
大脳皮質神経細胞は神経前駆細胞から生み出される。この神経細胞への分化過程には様々な細胞外からの情報が利用されることが知られている。しかしながら従来、G蛋白質共役受容体を介したシグナリングが神経前駆細胞の運命決定に寄与しているという報告は皆無であった。私共は、GPRC5Bと呼ばれるG蛋白質共役受容体がマウス大脳新皮質の神経前駆細胞に特異的に発現していることを見出した。GPRC5Bに対するshRNAを神経前駆細胞にインビボ遺伝子導入すると、神経前駆細胞が神経分化しなくなることを見出した。さらに、これら細胞は最終的にアストロサイトへと分化した。このGPRC5Bの下流経路を解析した結果、GPRC5Bは三量体G蛋白質G12と共役すること、さらに βカテニンを介したシグナリングを調節することを明らかにした。大脳新皮質の発生の後期課程では、βカテニンを介したシグナリングは神経細胞への分化決定に重要な役割を果たすことが知られており、GPRC5BはG12を介してβカテニンシグナリングを調節し、神経前駆細胞の神経分化をコントロールしていると考えられた。またGPRC5B以外のG蛋白質共役受容体について、神経前駆細胞に特異的に発現するオーファン受容体をいくつか同定できた。現在、それら分子の機能について解析中である。本研究の結果、従来の研究では全く見過ごされてきた、神経前駆細胞の運命を決定する新たなシグナリングを同定することができた。このことは、神経前駆細胞の複雑な運命決定のメカニズムを理解する上で極めて重要な発見である。
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