2011 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質における神経細胞の発生および維持に関与する分子機構の解析
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21300122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞田 佳門 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50431896)
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Keywords | Nfil3 / ALS / 神経保護 |
Research Abstract |
中枢神経系を構成する神経細胞は、一生涯にわたって健全に維持されなければならない。そのため神経細胞には、様々な細胞傷害性ストレスから自己を保護するための神経保護システムが内在すると考えられる。この神経保護システムの理解を前進させることは、神経細胞のストレス抵抗性を上昇させる手法の開発に繋がる。この手法は、神経変性疾患等において神経細胞の変性や細胞死を遅延したり、抑止するための治療戦略の指針になる可能性がある。本研究では、培養した神経細胞において、種々の細胞傷害性ストレス暴露に伴って、bZIP型転写因子Nfil3が発現上昇することを見出した。さらに、Nfil3を過剰発現すると、神経細胞は神経毒に対して頑強になった。一方、Nfil3を発現抑制した場合には、神経細胞は神経毒に対して脆弱になった。このことから、Nfil3は細胞傷害性ストレス暴露に伴って発現上昇し、神経細胞を保護する役割を担うことが判明した。そこで、Nfil3を神経系で過剰発現するマウスを作製した。さらに、神経変性疾患の一つである筋萎縮性硬化症モデルマウス (ALSマウス)との二重変異マウスを作製した。その結果、ALS マウスと比較して、Nfil3を過剰発現したALSマウスでは、体重の減少および四肢の筋力低下といったALS様の症状の発症が顕著に遅延することが判明した。同様の現象は、他のNfil3過剰発現マウスを利用した場合にも観察できた。このことから、Nfil3は生体内においても、神経保護作用を示すことが推察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Nfil3の役割を培養神経細胞およびマウスを用いて調べることを目的とした。本年度の研究により、培養神経細胞および個体において、Nfil3が神経保護を担うことが明らかになった。このことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はNfil3を過剰発現したALSマウスに関して、個体レベルでの研究を実施した。今後は、ALSマウスにおける運動神経の変性やアストロサイトの活性化なども、Nfil3の過剰発現によって緩和されていることを確認し、Nfil3がALSモデルマウスにおける運動神経の変性を抑制し、その結果としてALSの発症が遅延していることを明らかにする。
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