2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21300125
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 功 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (20183741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 茂 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (30051907)
野村 政壽 九州大学, 大学病院, 講師 (30315080)
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Keywords | 脳の左右差 / 海馬 / 神経回路 / NMDA受容体 / 行動解析 |
Research Abstract |
我々は内臓逆位を示す自然突然変異であるivマウスの海馬が右側異性を示すことを明らかにした。そこで、我々はivマウスの行動を解析する事によって脳の左右差の異常が動物の行動にあたえる影響を明らかにできるのではないかと考えた。我々は空間学習ならびに参照記憶を調べるために乾燥型迷路課題を、また作業記憶を調べるには遅延非見本あわせ課題を用いて解析した。その結果ivマウスは空間学習ならびに作業記憶の保持に関して劣っている事が明らかになった。これにより、我々が発見した海馬神経回路の非対称性は脳の高次機能において意味のある回路特性である事が確認された(PLoS ONE, 2010.伊藤&渡辺共著)。 次にivマウス海馬における遺伝子発現の特徴を、DNAマイクロアレイを用いて解析した。その結果、ivマウスにおいて著しく発現が低いいくつかの遺伝子が明らかになった。その一つは、Major Histocompatibility complexクラス1(MHC-1)遺伝子である。MHC-1は免疫系において、特異的な抗原認識機構に関与する重要な因子であることはよく知られている。しかし最近、脳神経細胞においてもMHC-1分子の発現が確認され、脳の発達、分化および可塑的性質の発現など、主要な脳機能にも密接に関与することが示唆されている。そこで、我々はMHC-1のβサブユニット(β2m)をコードする遺伝子をノックアウトしたマウス(β2mノックアウトマウス)を用い、このマウスの海馬神経回路の特性を生理学的に解析した。その結果β2mノックアウトマウスの海馬は神経回路の非対称性を完全に消失しており、シナプス可塑性に関しても野生型マウスとは異なる特性を示す事が明らかになった。
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