2010 Fiscal Year Annual Research Report
生体における神経回路の入力応答性と神経伝達調節因子による調節
Project/Area Number |
21300127
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
井本 敬二 生理学研究所, 生体情報研究系, 教授 (00176512)
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Keywords | 神経細胞 / パッチクランプ / HCNチャネル / シナプス / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究では、大脳皮質・視床・小脳皮質・脊髄等の神経細胞を対象として、感覚刺激等の入力と神経回路内で協調して発生するスパイクとしての出力との関係を、in vivoパッチクランプ記録を含む電気生理学的計測と実験データの数理的解析を通して明らかにするとともに、神経調節因子による出入力の調節を実験的・理論的に検討することを目的としている。 平成22年度は、主に次のことを行った。 欠神発作モデルマウスで、発作の持続に重要な役割を果たすと考えられるHCNチャネルの解析を進めた。視床下核の神経細胞で本チャネルの活性が低下しており、神経細胞の興奮生を増加させている。また薬剤によりHCNチャネルの活性を抑制もしくは増強することにより、欠神発作の持続時間が延長・短縮することが実験的に示された。 シナプス連続刺激に伴う短期的シナプス増強のメカニズムを理解するために、シナプス電流のキネティクスを詳細に検討し、これまでに報告のない電流減弱相の時定数の増加という減少を見いだした。この現象を理解するために、神経終末のカルシウム上昇、小胞放出、グルタミン酸受容体活性化のステップを総合的にシミュレーションした。実験データと照合することにより、時定数の遅延がグルタミン酸のシナプス周囲への蓄積によることが推測された。またこれまで実験的データのないカルシウム上昇の下降相の様子、および連続刺激によるカルシウム上昇のパターンが推測された。 多数の神経細胞のシミュレーションの高速化を目指して、汎用GPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)を備えたワークステーションを導入し、GPUに適したプログラムの開発を行った。この技法を利用してどの程度まで複雑な神経細胞の計算が可能かを検討中である。
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Research Products
(18 results)