2010 Fiscal Year Annual Research Report
Necdinを中核とする蛋白質ネットワークによるニューロンの生存維持機構
Project/Area Number |
21300138
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉川 和明 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (30094452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大雲 剛志 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (50432505)
長谷川 孝一 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (20546783)
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Keywords | Necdin / 蛋白質ネットワーク / Sirt1 / Fox01 / SMC5/6複合体 / エネルギー代謝 / 視床下部 / 哺乳類ニューロン |
Research Abstract |
哺乳類に特異的な蛋白質であるNecdinを中核とする蛋白質ネットワークとして、エネルギー代謝やDNA損傷応答に関与することが推定されている蛋白質脱アセチル化酵素Sirt1-基質蛋白質系とSMC5/6複合体系を中心に検討した。まず、NecdinがSirt1による蛋白質の脱アセチル化を促進し、ニューロンの生理機能を調節している可能性が高いため、エネルギー代謝に関与する転写因子Fox01のアセチル化を介した機能変化を調べた。Necdin遺伝子変異マウスでは視床下部弓状核に存在するニューロンにおいてアセチル化Fox01のレベルが有意に増加した。それに伴ってFox01が制御する神経ペプチド遺伝子発現の増加が認められた。これらの神経ペプチドは、甲状腺刺激ホルモン遊離ホルモンの発現を介して甲状腺ホルモンの分泌に関連する可能性があるため、甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの血中濃度を測定したところ、Necdin遺伝子変異マウスでは有意に減少していた。また、これらのマウスは甲状腺ホルモン系の機能低下の症状を示した。さらに、NecdinはDNA損傷応答に関与するSMC5/6複合体の構成要素Nse1とNse4に結合することによって複合体を安定化することが明らかになった。そこで、Necdin遺伝子変異マウスの大脳ニューロンを培養してDNA損傷を誘発したところ、DNA修復活性が有意に低下し、細胞死の増加が認められた。したがって、NecdinはSMC5/6複合体を安定化することによってDNA修復能を維持し、細胞生存を促進することが推定される。これらの研究によって、哺乳類ニューロンに内在するNecdinは、Sirt1やSMC5/6と複合体を形成して、エネルギー代謝やDNA修復活性を制御することにより、生存維持に働いていることが明らかになった。
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