2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21300148
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立花 政夫 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (60132734)
|
Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 / シグナル伝達 / 網膜 |
Research Abstract |
脊椎動物の網膜では、成熟後も各種神経細胞間にギャップ結合が存在する。これらは、ノイズの低減、同期の生成、受容野サイズの調節、桿体シグナルの錐体経路への伝達などに関与していることが知られている。しかし、網膜第2次ニューロンである双極細胞間に存在するギャップ結合の機能的意味は不明であった。そこで、成熟キンギョから剥離網膜標本や網膜スライス標本を作製し、巨大な軸索終末部を持つMb1型(オン型)双極細胞や神経節細胞にホールセルクランプ法を適用して双極細胞間のギャップ結合の機能を検討した。その結果、(1)Mb1型双極細胞同士は樹状突起間でギャップ結合していること、(2)ギャップ結合には整流性や電位依存性はなく、ローパスフィルタの特性を示すこと、(3)比較的近距離にあるMb1型双極細胞同士は、膜電位変動が同期しており、ノイズの低減に貢献していること、(4)脱分極性電流をMb1型双極細胞に注入すると軸索終末部でCaスパイクが発生し、ギャップ結合した隣接のMb1型双極細胞を電気緊張性に脱分極させて約10msの遅延後に軸索終末部にCaスパイクを発生させること、(5)Mb1型双極細胞に短い脱分極パルスを与えると神経節細胞から時間経過の非常に長い興奮性シナプス後電流が誘発されるが、ギャップ結合の阻害剤を投与すると短縮されること、(6)この長い興奮性シナプス後電流は、Mb1型双極細胞間のギャップ結合を介した電気的ネットワークをCaスパイクが遅延を伴いながら波及していくことによって生成されること、がわかった。したがって、ギャップ結合を介して電気的に結合しているMb1型双極細胞ネットワークは、膜電位変動の同期やノイズの低減に寄与するのみならず、Caスパイクを介した側方情報伝達にも関与していると結論した。
|