2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21300148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立花 政夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (60132734)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 / シグナル伝達 / 網膜 / 電気シナプス / 抑制性シナプス |
Research Abstract |
網膜における視覚情報処理の特徴は、大量の光情報を各種の神経回路網(輝度・色・動きなどを検出するフィルター群)で並列的・アナログ的に処理し、複数の視覚中枢にそれぞれ対応する情報を送ることである。網膜では各種の視覚情報処理に適した神経回路網が構築され、そこでのシナプス伝達特性も最適化されていると考えられる。昨年度、キンギョ網膜の第2次ニューロンであるMb1型双極細胞は、外網状層に広がる樹状突起間にギャップ結合があり、電気的ネットワークを形成していること、また、Caスパイクが時間遅れを伴ってこの電気的ネットワークを伝搬することを報告した。この現象の機能的意義を明らかにするために、シナプス後細胞である神経節細胞から静止したバーや動くバーに対する光応答を記録したところ、あるサブタイプでは動きの予測に関わっていることが示唆された。一方、Mb1型双極細胞軸索終末部には、シナプスリボン近傍に相互シナプスがあり、また、シナプスリボンからやや離れた部位に抑制性シナプス入力が存在する。そこで、網膜スライス標本にホールセルクランプ法を適用して、Mb1型双極細胞の細胞体から離断された軸索終末部と、外網状層において樹状突起が電気的ネットワークで結合されているMb1型双極細胞の軸索終末部から同時記録を行った。その結果、軸索終末部には局所的で速い抑制性シナプス入力と大域的で時間遅れのある抑制性シナプス入力のあることが明らかとなった。いずれもGABA作動性であり、グリシン作動性ではなかった。局所的入力はシナプスリボン近傍の相互シナプスを介し、大域的入力は多数のMb1型双極細胞からの入力を受けるアマクリン細胞を介す抑制性シナプス入力であると考えられる。
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