2011 Fiscal Year Annual Research Report
関節周囲組織の網羅解析から拘縮の発生メカニズムとリハビリテーションの効果を探る
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21300200
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
沖田 実 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50244091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 治郎 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (20380834)
折口 智樹 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (90295105)
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Keywords | 拘縮 / 骨格筋 / 皮膚 / 関節包 / コラーゲン / 線維化 / TGF-β / 筋線維芽細胞 |
Research Abstract |
今年度は、ラットを用いて(1)足関節を底屈位で不動化した拘縮モデル、(2)膝関節を屈曲位で不動化した拘縮モデルを用いて以下の検索を行った。(1)のモデルでは1・2・4・8・12週間不動化した後のヒラメ筋を検索材料に用い、RT-PCR法にてtypeI・III collagen、筋線維芽細胞のマーカーであるα-SMAならびにサイトカインの一つであるTGF-ssのmRNAレベルでの動態変化を検索した。結果、上記すべての分子のmRNAは不動1週より対照群に比べ発現増加を認め、さらに、typeIcollagen mRNAにおいては不動4週まで不動期間の延長に伴う発現増加が認められた。次に、(2)のモデルでは1・2・4週間不動化した後の膝後面の皮膚ならびに後方関節包を検索材料に用い、Picrosirius Red染色によってこれらの組織を構成するcollagenを可視化し、画像解析によって線維化の発生状況を半定量化した。結果、皮膚においては不動1週より真皮から皮下組織におけるcollagenの増生、すなわち線維化の発生を認め、半定量解析の結果でも対照群との有意差が認められ、この傾向は不動4週でさらに進行した。また、後方関節包の滑膜においても不動1週よりcollagenの増生を認め、半定量解析の結果でも対照群との有意差が認められ、この傾向は不動4週でさらに進行した。加えて、同部位のコラーゲンの密生化に関しては不動1週では明らかではなかったが、不動2・4週では顕著となり、この半定量解析の結果でも不動2・4週は対照群ならびに不動1週と有意差が認められた。以上のことから、拘縮発生時は骨格筋、皮膚、関節包といったすべての関節周囲軟部組織にcollagenの増生に伴う線維化の発生が認められ、これは拘縮の病態メカニズムとして重要な変化であることが明らかとなった。また、骨格筋に限っては不動によってTGF-ssのサイトカインシグナルが活性化し、線維芽細胞の亜型である筋線維芽細胞への分化が促され、その結果としてtype I・III collagenが増加するといった筋性拘縮の発生機序に関する分子メカニズムが明らかになりつつある。
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