Research Abstract |
本研究では,動作想像や認知に関連する事象関連電位を抽出し,入力として利用するとともに,被験者がシステム誤動作を認知したことを検知して,補正機構を稼働させるなど,複数の事象関連電位情報を組み合わせて機能するブレイン・コンピュータ・インターフェースを構築することを目的として,認識や運動に関連した脳波の識別に関する研究を進め,以下の概究成果を得た. (1)運動に関連した脳波変動解析を用いたシステムの構築 混合パルスモデル,サイクロイド関数モデルに関して検討を進め,右手・左手動作想像の識別において,定常パルス系列除去フィルタとして働くことを確認した.ARモデルに基づく脳波からの筋電位活動推定において,可同定性の観点から128Hz程度のサンプリング周波数が最適であることを確認した.また,ICAを適用して得られる分離行列から推定されるソース位置は,エラーポテンシャル出現時に前頭部に偏ることを確認した. (2)視覚・聴覚刺激を利用したシステムに関する検討 符号化された系列に従って複数の文字を独立に点滅させ,注視している文字を脳波から識別するBCIシステムにおいて,ICAと適応型モルフォロジカルフィルタを適用することによって,データ長7.5秒では約75%(5名の被験者平均),22.5秒長では約87%の精度で識別が可能であり,原信号に直接適用するより約25%改善できることを確認した,また,定常聴性反応脳波を利用したBCIシステムに関して基礎的な実験を行い,適用可能性を検討した. (3)可搬型システムの構築 無線LAN機能を有するEmotiv社製脳波計測装置と透過型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を組み合わせたプロトタイプのBCIシステムを作成し,その応用可能性を検討した.その結果,透過型ディスプレイの利点を生かした光点滅刺激BCIシステムの構築が可能であること,脳波計測装置とHMDの同時装着のためには,機器の構造的改造が必要であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動や視覚・聴覚刺激に関連した脳波変動解析を用いたBCIシステムにおける,脳波解析手法の開発ならびに検討を行い,検討結果に基づいて計画した実験を実施して得られたデータへ適用してその性能評価を行うとともに,可搬型プロトタイプBCIシステムを構築して問題点を検討できるなど,臨床の場で容易に利用できるBCIシステムを構築する上での基礎は確立できてきており,おおむね順調に進展しているものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
より微細な脳波変動を検出できるよう手法の改善を行うとともに,識別できる動作想像の種類を増やし,図形想像時脳波変動成分抽出法,光点滅刺激応答のVEP成分抽出法,定常聴性反応脳波解析法を複合的に組み合わせて,より使いやすい安全なBCIシステムの構築を行う,また,そのサブセットとして,安緬な可搬型BCIシステムを構築し,臨床の場で実験を行うことができる環境を整える.
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