2012 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニケーションの創発過程を具現化する聴覚障害児の数学の授業のための教材開発
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21300287
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
江森 英世 群馬大学, 教育学部, 教授 (90267526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 明 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (60289791)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 数学教育 / 数学的コミュニケーション / コミュニケーションの創発性 / 反省的思考 / 反照的思考 / アブダクション / 国際情報交換 / タイ王国 |
Research Abstract |
問題の解決に向けた初源的な取り組みは,まず,問題解決のために思考の対象を顕在化する「表す」という作業から始まる.思考の対象を眼前に表すという作業は,問題解決の見通しが未だつかない中で,さまざまな試行錯誤を通して行われる.そして,表された対象物は反省的な思考で捉えられ,より考えやすい表現に書き換えられることになる.試行錯誤と反省的思考の連鎖の中では,個人の問題解決者は,自らが所有している知識や経験に依存した思考を行うことにより,また,自らの思考の癖によって,無意識のうちに循環型の思考に落ち込むことがある.これが個人による問題解決の限界となる.こうした循環型の連鎖を断ち切る役目を果たすのが,他者からの刺激(例示された表現)を受けることである. 他者から送信されたメッセージを受信することは,所有しながら活用することを忘れていた知識や経験を想起させてくれたり,あるいは,まったく異なる表現に出会うという機会を与えてくれたりする.こうした他者からのメッセージの受信は,そのメッセージが自分自身の思考の枠組みから外れているほど,受信者に「驚き」を伴って受信される.ここで経験される情動的な経験は,個人の問題解決過程では,新たなシェマの活性化により解消されるが,他者から与えられた刺激に対する驚きの解決方法は,与えられた図などを観照し,自分自身を納得させる新たな解釈を得るしか方法がないので,驚きを解消するための初源的な仮説を形成させる推進力となる.「なぜ,そんな例示をするのか」という驚きは,他者が送信したメッセージ(例示された表現)の意味を,自分を納得させる仮説として,形成させるように促すのである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災に伴って起きた福島原子力発電所の事故により,研究分担者の所属する福島大学では,事故から2年を経た今も,さまざまな問題が山積しており,継続的に研究体制を維持することが困難であるが,研究分担者ならびに研究協力者の尽力により,聴覚障害者へのケアーなど,予定外の成果ももたらされた。研究環境が整わず,厳しい2年目であったが,研究計画に従い,予定どおりに研究を進行させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の5年目最終年度となる平成25年度は,5年間の研究をまとめる最終ステップへと向かうことになる。これまでの4年間の成果を整理統合しながら,研究計画に従い,予定どおりに研究を進めることにする。なお,東日本大震災に伴ってその問題の所在が明確になってきた,災害発生時の聴覚障害者への情報伝達や情報提供という問題について,私たちの研究,すなわち,コミュニケーションという観点から,当初の計画にはない問題へもできる限り対応していくことにする。
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Research Products
(7 results)