2012 Fiscal Year Annual Research Report
高次の理科学力を育成する教育方法の開発と実践に関する研究
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21300291
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
堀 哲夫 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30145106)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 理科学力 / メタ認知 / 科学的リテラシー / 学習履歴 / OPPA / OPPシート / 内化・内省・外化 / 授業力向上 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、以下の四点にまとめることができる。 第一は、OPPAの基本的骨子と理論的背景の関係に関する研究である。これまで、OPPAに関する日本語のものは存在しない。これに関しては、最終年度のまとめに向けて、内容をさらに深化させるための研究を続けている。 第二は、高次の学力形成には、理科における授業力向上が不可欠であり、またそれと深く関わっているのが授業前・中・後の教材研究であるので、OPPシートを活用し、中学校理科で実践を行い検証を行った。これまで教材研究の重要性は指摘されてきても、そのほとんどが授業前に行われていたので、授業中・後の方法についてOPPシートを使った具体的内容を検証した。その結果、授業力向上には、授業前・中・後の教材研究の教材研究が必要不可欠であり、それが授業力向上につながることを明らかにした。 第三は、OPPシートを活用した高次の学力形成における教師の働きかけに関する研究を高校「生物I」の実践を中心にして行った。高次の学力であるメタ認知は、学習や授業において適切な教師の働きかけが必要不可欠であるので、OPPシートを活用してその働きかけを行い、その効果を検証した。具体的には、OPPシートの中に学習者が表現した学習履歴を活用して、思考や認知過程の内化・内省・外化を促し、教師が適切なコメントを加えたり、授業改善を図ったりすることによってメタ認知の能力の育成をはかった。 第四は、学習者の資質・能力の育成には、教育内容の評価が不可欠であると考えられるので、OPPシートを利用してカリキュラム評価を行ったことである。具体的には、OPPシートに書かれた学習者の学習履歴から、教育内容構成の適否を判断し、改善につなげ検証したことである。 上記、第二~四までは、本学の『教育実践学研究』第18号に成果をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、以下にあげる四つの理由から、おおむね順調に進展していると考えられる。 第一は、研究成果のほとんどを学会発表し、紀要等の研究物にまとめてきたという実績があることである。研究成果の一つや二つを実績として発表することはできても、複数積み重ねるということは、たとえどんなに優れた研究協力者に恵まれていたとしても、かなり難しい。 第二は、教育学に関する研究は、理論と実践の止揚がきわめて難しいのだが、理論を実践において検証してきているという事実である。本研究は、OPPAの理論を提案し、その実践における効果を具体的に学習や授業を通して検証している手法をとっており、授業評価を基礎にしてそれを授業改善につなげ、学力向上をはかっていこうとしている。 第三は、本年度の成果に見られるように、授業評価のみならず、教材研究、カリキュラム評価などの多くの方面にOPPAの考え方が適用できるからである。OPPAは、OPPシートを利用して研究を進めるのだが、この原理・原則が、多くの活用を可能にしているので、研究の広がりと深まりが可能になっている。 第四は、第三とも関係しているが、理科のみならずOPPAが小・中学校、高校、大学、大学院の校種を問わず、また教科・科目および教科外の活動においても活用されてきているという実績である。教育実践において重要なのは、校種ごとや教科・科目ごと、教科外の活動などで、学力を向上させるためのやり方が異なっているのではなく原理・原則が、同じであるという考え方であり、その追究である。そうでなければ、教師はいくら時間があっても足りない。この現状を克服する理論と実践が求められており、OPPAはその一つと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度に当たる平成25年度は、以下の三点から研究の集大成をはかりたい。 第一は、OPPAの理論と実践に関して全体像が把握できるようにまとめを行う。OPPAの理念やその背景、教育目的と学力モデル、学習観や授業観と授業のグランドデザインなどの概要を高次の学力育成の観点から再検討する。 第二は、OPPAと診断的・形成的・総括的評価、思考や認知過程の内化・内省・外化、ポートフォリオ評価・パフォーマンス評価・自己評価、メタ認知の育成、授業前・中・後の教材研究などの観点から再検討する。 第三は、OPPAの教育効果を検討するとともに、その活用可能性に関して提案を行っていきたい。 いずれも、理科などの教育実践および高次の学力形成という視点から研究を進めていきたい。
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Research Products
(12 results)