Research Abstract |
IEAの理科教育に関する国際比較調査における学力の捉え方の変遷を,調査の枠組みから分析・検討した結果,1995年のTIMSSからは,それ以前の1970~1980年代の調査における「知識,理解,応用」という認知的目標の形式から,「問題解決,分析,科学的方法の使用,自然界の探究」といった行動的目標へ,さらには最新の2007年のTIMSSでは「知ること,応用すること,推論すること」という思考操作に基づいて,「情報を解釈する」,「科学的説明をする」,「証拠から結論を導くための推論をする」という新たな行動的目標の形式へと変化してきていることが明らかとなった。PISAやTIMSSといった国際調査を推進している欧米のカリキュラムの改革動向は,我が国における全国学力・学習状況調査に追加教科として実施予定の理科の評価問題の在り方にも大きな影響を与えるであろうことが指摘できる。 また昨年度に引き続き,TIMSSにおける日本の児童生徒の記述回答を,独自の観点からデータベース化し,分析を行った。加えて今年度は,日本の小学校理科教科書の疑問文の表現形式の特徴について分析を行い,結果を学会で発表した。そこでは,名詞としての科学用語に関わる疑問文数が学年進行に伴って増えること,Yes/Noタイプの疑問文と名詞を問う疑問文,副詞・形容詞を問う疑問文の割合が大きく異なる学年が存在することが明らかになった。 小学校理科における思考を伴う表現の一つとして,ノートの記述に着目し,ノートの中に書かれた仮説とその根拠に注目した。その結果,問題解決過程を繰り返した学習集団の子どもは,問題と整合性の取れた仮説が書けるようになるとともに,仮説の根拠の客観性が増してくると言った傾向が見られた。このように,子どもの思考を見取る方法の一つとして,ノートの分析をあげることができた。
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