2011 Fiscal Year Annual Research Report
科学的・論理的思考に基づいた表現力に関する経年変化研究
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21300298
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
猿田 祐嗣 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター, 総合研究官 (70178820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 迅 宮崎大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90237470)
隅田 学 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (50315347)
石井 雅幸 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (50453494)
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Keywords | 科学的思考 / 論理的思考 / 表現力 / 分析 / IEA / TIMSS / 小学生 / 中学生 |
Research Abstract |
新しい学習指導要領において重視されている思考力や表現力の実態を探るために,TIMSSやPISAのデータを詳しく分析した。その結果,日本の小学生は推論領域問題の平均正答率が知識領域及び応用領域に比べて低いが,国際的に見ると推論能力は高く,中学生は,自分で推論を行い表現することが苦手であることが示唆された。高校生は「科学的な疑問を認識すること」や「現象を科学的に説明すること」は国際平均得点を下回っており,思考力や表現力の面で懸念される事態にあることが分かった。 また,小・中学校の教科書に書かれている「問い」を分類・整理し,問いが規定する思考と表現について検討した。中学校理科教科書5社の分析結果からは,物理・化学・生物・地学のすべての領域において「どんな」または「どのような」に関する問いが多いことが見いだされた。「どんな」「どのような」に関する問いは,それに続く言葉によって内容が規定され,物理領域と地学領域では「関係」が多く用いられており,生徒は物事の関係性についての思考を促されていることが示唆された。化学領域と生物領域では「はい・いいえ」などの二者択一で答えることのできる,仮説を含んだ問いが多いことも見いだされた。このような問いでは,生徒が,観察や実験の前に仮説を立てて,それによって問題点を明確にして思考・表現する学習が促されていることが示唆された。「はい・いいえ」で答えることのできる問いは,小学校の教科書でも多く用いられており,日本の理科において特徴的な思考の流れを示唆するものであった。 さらに,都内公立小学校5校において,児童一人一人が科学的な思考力を獲得するための授業形態を提案し,その効果を子どものノート記述内容を検討するこどによって明らかにした。 国内外の関連研究者と意見交換を行いながら,『科学的思考』に関する概念的整理とモデル構築,今日的なその教育的意義の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小・中学隼の思考力や表現力の実態を,TIMSSやPISAの国際比較調査のデータ分析から明らかにするとともに,それらを育成するための方策について授業実践を行い,それらの成果をまとめた報告書を刊行することができた。理科教科書分析や国外の調査データを収集し,新たな視点からの研究を展開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに進展しており,TIMSS2011の最新調査データをもとにした分析をさらに進める予定である。
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Research Products
(12 results)