Research Abstract |
本研究の目的は,シリカを保存材料とし,自然の地盤(土)や岩盤(岩,岩石)の中に生息する微生物の代謝活動を積極的に活用することによって,安価で環境に優しく耐久性に優れた新しい遺構,遺物,石造文化財などの保存材料(強化材料,接着剤,補填材料など)を作製し,作製した保存材料のゲル化・固化のメカニズムを明らかにし,明らかにした保存材料を使用した土および岩石の力学・水理学特性について微視的かつ空間的に検討し,新たに開発した保存材料の有効性について評価を行い,環境保全性に優れた新しい保存材料の提案を行うことである。2年目である平成22年度は,以下の3項目について実施した。得られた主な成果の概要は,以下に示すとおりである。 (1)シリカの室内ゲル化試験:イースト菌および土壌微生物の代謝活動を利用して,グルコースなどの有機栄養源を含むシリカ溶液をゲル化させる試験を行った。微生物の代謝活動に関与する要因としては,有機栄養源,温度,pHに着目し,これらの組み合わせを変化させた場合に見られるシリカ溶液のゲル化特性について検討を実施した。 (2)保存材料を使用した供試体の作製:地盤(土)を対象とし,その粒子間に存在するシリカをゲル化させることによって保存処理を行った供試体を作製すると同時に,供試体の作製方法について検討を実施した。 (3)保存材料を使用した供試体の力学・水理学特性の評価:シリカの保存材料を使用した供試体を用いて,密度試験,含水比試験,pH試験,一軸圧縮試験,フォールコーン試験,透水試験などの室内試験および微生物相に関する調査を実施した。また,保存材料による処理前後の物性値および生菌数を比較することによって,供試体レベルにおける地盤(土)に対する保存処理の効果と保存材料の有効性について評価を行った。
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