Research Abstract |
本研究の目的は,シリカを保存材料とし,食経験があり飲食可能な微生物あるいは自然の地盤(土)の中に生息する微生物の代謝活動を積極的に活用することによって,安価で環境に優しく耐久性に優れた新しい遺構,遺物,石造文化財などの保存材料(強化材料,接着剤,補填材料など)を作製し,作製した保存材料のゲル化・固化のメカニズムを明らかにし,明らかにした保存材料の有効性について評価を行い,環境保全性に優れた新しい保存材料の提案を行うことである。3年目となる平成23年度は,(1)保存材料を使用した供試体の作製,(2)保存材料を使用した供試体の力学特性の評価,(3)新しい保存材料の有効性に関する評価,の3項目について実施した。得られた主な成果は,以下に示すとおりである。(1)保存材料を使用した供試体の作製:対象とする地盤として砂質土および粘性土を使用し,それらの土粒子間の間隙にシリカをゲル化・固化させることによって保存材料を使用した供試体を作製した。また,常温常圧のシリカ溶液からゲル化したシリカは通常非晶質であり,この非晶質シリカのゲル化の程度を制御した供試体の作製方法に関する検討を実施した。(2)保存材料を使用した供試体の力学特性の評価:シリカを保存材料とした砂質土および粘性土の供試体を用いて,力学を中心とした各種の室内試験を実施した。また,保存材料のゲル化・固化のメカニズムを明らかにするために,理論的な検討を実施した。(3)新しい保存材料の有効性に関する評価:新たに開発した保存材料の有効性について検討するために,保存材料による処理後の物性値を処理前の物性値と比較することにより,地盤(土)に対する保存処理の効果について評価を実施した。その結果,保存材料は環境保全性および耐久性に優れていること,また,特に砂質土に対して有効であることなどが確認された。
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