2009 Fiscal Year Annual Research Report
CO2濃度上昇による海洋酸性化が魚類の初期発生と成長に及ぼす影響
Project/Area Number |
21310013
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石松 惇 Nagasaki University, 環東シナ海海洋環境資源研究センター, 教授 (00184565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 晴子 琉球大学, 亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構, 特任助教 (40397568)
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Keywords | 海洋酸性化 / 二酸化炭素 / 魚類 / 成長 / 初期発生 / 生残 |
Research Abstract |
今世紀末に想定されるCO_2濃度(560-1000ppm)が海産魚類の孵化率・生残率および成長率、耳石・筋肉・腎臓組織などの器官形成、および遊泳運動に及ぼす影響を明らかにする。さらに、CO_2影響機構の解明のため、初期発生段階における代謝速度、イオン調節能、酸塩基平衡調節、酸排出能、および甲状腺機能への影響について検討する。今年度はモデル生物として、海産のジャワメダカ、クマノミおよびカクレクマノミを用いて、飼育条件の検討と産卵数と初期発生に及ぼす影響を検討した。 ジャワメダカ7ペアのうち継続的に産卵したのは対照区で2ペア、実験区で1ペアであった。両区間で、産卵数、受精卵数、受精率、孵化率、孵化するまでの日数及び孵化時の仔魚の全長に有意差はなかった。従って、海洋酸性化が本種の産卵と初期発生に及ぼす影響は、無脊椎動物と比べて弱いと考えられる。しかし、今回の飼育環境下では、馴致期間中に比べて実験水槽内で継続的に産卵したペア数が少なかったため、実験条件の改善が必要である。 クマノミ・カクレクマノミ 水温29℃、CO_2分圧1000μatmに曝露されたクマノミ胚の心拍数は受精後96hには対照区 (CO_2380μatm,水温29℃)に比べて高くなる傾向がみられ、、その後は不整脈が観察された。高水温(31及び32℃)下で飼育された胚は、CO_2分圧に関わらず、46時間の時点で胚の形態に異常が見られる奇形個体が多く観察され、対照区より低い生存率を示した。一方、カクレクマノミ孵化稚魚においては、水温や高CO_2による形態、成長、生存率に対する影響は観察されなかった。クマノミの孵化仔魚においては、形態、成長、生存率に対するCO_2分圧の影響は観察されなかった。以上の結果より、クマノミ種間での温度耐性には差があり、特にクマノミ胚は水温及びCO_2の上昇による影響を受けやすい事が明らかになった。本実験の結果は、100年後に予測される海洋環境がクマノミの初期発生に影響を与える可能性を示唆している。
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