2011 Fiscal Year Annual Research Report
北極土壌圏温暖化に伴う凍土融解と土壌微生物による化石炭素の分解促進に関する研究
Project/Area Number |
21310015
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
内田 雅己 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (70370096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 昌男 独立行政法人国立環境研究所, 化学環境研究領域, 主任研究員 (50344289)
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Keywords | 環境変動 / 土壌圏現象 / 微生物 / 極域 |
Research Abstract |
北極スバールバル諸島では、地質時代に生成した土壌有機炭素(以下、化石炭素)が凍土中に大量に蓄積されている。このような環境は、北極高緯度域土壌圏において一般的であり、最近急速に温暖化の影響を受けつつある。特に冬季の気温上昇は、凍土層の崩壊を引き起こし、冬季における土壌呼吸量の増加という形で表れている。本申請課題では、先行研究で得られた微生物による化石炭素の分解に関する定性的な証拠を踏まえ、化石炭素の分解量の定量化を目指す。加えて、化石炭素の分解における温度依存性についても検討し、化石炭素分解量の長期的な変動についても検討する。 本年度は、ニーオルスンの氷河後退域において深度1mまでの土壌を連続的に採取し、有機炭素量の分析を行った。さらに土壌から微生物脂質のリン脂質脂肪酸の抽出条件の検討、PLFAの放射性炭素および安定炭素同位体分析を実施した。バルクの有機炭素の放射性炭素年代は、表層の数千年から、深度30cmで4万年といずれの層でも有機炭素の多くが化石炭素からなることが分かった。さらに、PLEAの放射性炭素年代は、表層10cmで最も古いもので5000年だった。深度20-30cmでは、さらに古く12000年だった。これらの結果から計算された微生物により分解されている炭素のうち、化石炭素の割合は、0-10cmで30%、20-30cmで70%にもなっていることがわかった。本研究ではPLFAを用いて初めて微生物により分解される炭素源について、定量的に求めることに成功した。
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