2009 Fiscal Year Annual Research Report
酵素阻害反応を用いた有機リン化合物放散量測定器の開発
Project/Area Number |
21310020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳澤 幸雄 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30313042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 美由貴 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特任研究員 (00431809)
三林 浩二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40307236)
工藤 寛之 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 講師 (70329118)
齊藤 浩一 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (00205668)
篠原 直秀 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 研究員 (50415692)
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Keywords | 環境分析 / 影響評価手法 / 有機リン化合物 |
Research Abstract |
本研究の目的は、有機リン化合物の放散量を測定する簡便かつ精確な測定器を開発することである。有機リン化合物の毒性メカニズムである酵素阻害反応を利用し、呈色させることで視覚的に放散量を把握できる、一般環境で広く用いられる測定器を目指している。本年度は、反応系の確立を目標とし、阻害反応や呈色に用いる試薬の検討を行った。 酵素阻害反応に使用する酵素はBChE(ブチリルコリンエステラーゼ)とし、BChCl(ブチリルコリン)、BChE、ChOx(コリンオキシターゼ)存在下で生成する過酸化水素をPOD(ペルオキシターゼ)と反応させ、呈色試薬SAT-3により吸光度として定量することとした。まず、過酸化水素の定量を目的とした呈色反応の検出可能範囲、温度の影響を調査した。呈色時間は5分とした。その結果、過酸化水素の定量可能範囲は、0.43μM~430μMとなった。温度の影響は、22、25、27℃とも過酸化水素濃度と吸光度は同様の正の相関を示し、22℃で最も呈色後の色素の安定性が高かった。 次に、BChEを用いて生成した過酸化水素の吸光度を測定したところ、過酸化水素溶液で測定した結果に類似したものとなった。BChEの定量上限は250mg/Lとなったので、BChE 250mg/Lで得られる過酸化水素量を100%とし、有機リン化合物存在下では阻害されたBChEの量に応じて何%のBChEが過酸化水素生成反応に関与したかを「BChE阻害率(%)」とすることとした。また、有機リン化合物が水に不溶であることをふまえ、有機リン化合物が可溶でかつ酵素の阻害をしない溶媒の検討を行ったところ、10%以下であれば酵素活性が保持できるとされているメタノール水溶液に対して、アセトンでは大きく吸光度が下がり、エタノールでは約10%阻害されて、メタノール溶液の吸光度よりやや低い値となった。本年度は、以上のように呈色によりBChEの阻害反応を定量できる可能性が示されたため、今後は確立した反応系をもとに気中の有機リン化合物の定量について検討していく。
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