2011 Fiscal Year Annual Research Report
大気汚染による植物の環境ストレスを活性酸素消去剤を用いて緩和する方法の検討
Project/Area Number |
21310023
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐久川 弘 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (80263630)
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Keywords | 大気汚染 / オゾン / 活性酸素消去剤 / 環境ストレス / 植物 |
Research Abstract |
23年度は、ナス、インゲンマメ、アカマツ、イチゴなどへのオゾン等の影響を活性酸素消去剤を噴霧することにより緩和する方法の検討を行った。さらに、植物の大気汚染ストレスを葉面上で光化学的に発生させた一酸化窒素(NO)ラジカルにより緩和・抑制することが可能かを検討した。広島大学総合科学部の圃場内に設置したオープントップチャンバー(6台)およびビニルハウス(5台)を用いて、オゾン(120ppb)、硫酸溶液(pH=3)、亜硝酸-硝酸溶液(pH=3)、多環芳香族炭化水素(フェナンスレン、10μm)をそれぞれ単独にあるいは複合的に上記の植物に暴露する実験をそれぞれ数週間から数ヶ月間実施した。マンニトールなどの活性酸素消去剤(溶液)を噴霧する処理区と噴霧しない処理区、またNOラジカル発生溶液(亜硝酸イオン溶液)を噴霧する処理区と噴霧しない処理区で、オゾン、硫酸、亜硝酸-硝酸、フェナンスレンの影響が如何に抑制されるかを検証した。測定項目は、最大光合成速度、葉内CO_2濃度、気孔コンダクタンス、クロロフィル蛍光、クロロフィル・カロチノイド含量、葉内金属元素濃度、ルビスコ含量、可視障害、地上部および地下部の生長量(乾重量)などであった。その結果、ナス及びインゲンマメに関しては、オゾン、フェナンスレンの単独及び複合影響により、光合成活性の低下が認められたが、マンニトールの前処理により、活性低下が有意に抑制され、さらに可視傷害も大幅に減少した。この結果は、OHラジカルなどの活性酸素種がこれらの汚染物質の植物への影響機構に深く関与することを示した。また、アカマツ、イチゴへのNOラジカルの影響を評価する実験を複数回行ったが、その影響を確認することはできなかった。得られた研究成果は、大気環境学会などで5件発表し、また3つの論文を作成してChemosphereなどの国際学術誌に出版した。
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