2011 Fiscal Year Annual Research Report
単一量子ドット分光による非平衡核スピン分布の可視化
Project/Area Number |
21310064
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
黒田 隆 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主幹研究員 (00272659)
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Keywords | 量子ドット / レーザー分光 |
Research Abstract |
本研究では、単一量子ドット発光における核磁場効果(オーバーハウザー・シフト)を観測することにより、母体結晶の核スピンの空間分布を1ミクロン・オーダーの空間分解能で可視化することを目的とする。オーバーハウザーシフトは、1マイクロ電子ボルトののオーダーの微小なスペクトル変化であり、そのため量子ドットの発光線幅も同等程度に狭くないと観測できない。しかしながら、我々の量子ドット試料は、線幅が100マイクロ電子ボルトのオーダーで広がっており、そのため精緻な核磁場計測が困難であった。そこで本年度は、単一量子ドット発光線のブロードニングの起因解明を進めた。一般に共鳴線の広がりは、均一広がりとスペクトル拡散に分別でき、おのおのは環境擾乱のタイムスケールで定まる。単一分子分光やコロイド量子ドットでは、秒~分の時間スケールで発光スペクトルが揺らぐことがよく知られている。一方、エピタキシャル成長の量子ドットでは、環境揺らぎのタイムスケールが短く、その同定はこれまで実現できなかった。今回我々は、スペクトル揺らぎの観測に光子相関手法を適用することにより、ナノ秒からマイクロ秒に渡る時間領域でスペクトル相関関数を決定し、超高速のスペクトル拡散過程の実証に成功した。特に得られた発見として以下が挙げられる。 ・エビ成長量子ドットのスペクトル拡散は、典型的には、マイクロ秒のタイムスケールで起こっているが、その相関時間は量子ドットの局所環境に強く依存する。 ・多くの場合、スペクトル相関関数は単一指数関数で表される。これは局所環境の影響が、個々の量子ドットに最近接する局在センターの状態で定まることを示唆している。
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