2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境に優しい導電性高分子・ナノ粒子ハイブリッド熱電変換材料の創製
Project/Area Number |
21310077
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
戸嶋 直樹 山口東京理科大学, 工学部, 教授 (50011010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北條 信 山口東京理科大学, 工学部, 教授 (50229150)
阿武 宏明 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (60279106)
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Keywords | 熱電変換 / ハイブリッド / ナノ粒子 / 導電性高分子 / ポリアニリン / PEDOT / ポリアセン / 熱伝導度 |
Research Abstract |
1.無機半導体ナノ粒子の合成 熱電変換性能の優れた半導体として知られるテルル化ビスマスBi_2Te_3の平均粒径20nm程度のものの合成にも成功した。この表面酸化層の除去を試みたが、殆ど認められなかった。酸化物熱電無機半導体であるp型のCa_3Co_4O_9(Co349)の物理的粉砕ではサブミクロンレベルにまで微細化できた。アルキルチオールやターチオフェンチオールで保護された金ナノ粒子も合成した。 2.導電性高分子の合成 ポリアセンについて原料に電子供与基を持つフェノールを使うなど工夫を凝らしたが、生成したポリアセンの電導率を改善するに至らなかった。ポリアニリンは、以前から使用している高導電性のものを引き続き使用した。ポリチオフェン誘導体(PEDOT-PSS)は市販のものを使用した。 3.無機ナノ粒子と導電性高分子のハイブリッド化とハイブリッド材料の熱電変換特性評価 以前粒径5nm程度の小さいBi_2Te_3ナノ粒子とポリアニリンのハイブリッド化で1桁高いゼーベック係数を見出したが、粒径20nmのBi_2Te_3ナノ粒子では、熱電性能指数ZTにして2倍以下の改善しか認められなかった。一方サブミクロンレベルのCo349粒子とのハイブリッドでは、Co349の体積分率の高い領域で急激にゼーベック係数が増加することが分った。ポリアセンと微細化グラファイトまたはC60誘導体とのハイブリッド材料では、期待したような熱電特性の改善は認められなかった。しかし、ポリチオフェン誘導体PEDOT-PSSと金ナノ粒子のハイブリッドでは、ナノ粒子の保護剤によって、熱電特性が改善されることが明らかになって、ZT=0.1を容易に実現できる系を見つけることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究を始めた時には、有機熱電変換材料の研究は世界中で我々のグループ以外殆ど行われていず、2007年に発表したポリフェニレンビニレン誘導体にヨウ素ドープしたもので熱電性能指数ZT=0.1がチャンピオンデータだった。しかし、ヨウ素は加熱により容易に脱離するため安定でなかった。本研究で、ナノ粒子のハイブリッド材料を開発し、本年度はPEDOT-PSSと金ナノ粒子の系で加熱しても安定にZT=0.1の性能を示す材料を開発できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を取り巻く世界の情勢は、この1年で大きく変化した。それは、世界中で有機熱電変換材料を研究する研究者が大幅に増えたことである。中でもスウェーデンのCrispinらは、昨年Nature MaterialsにZT=0.25の材料を発表した。彼らは、導電性高分子PEDOT-Tosの酸化状態を制御することでZTの値を改善している。この考え方を我々の系にも導入して、ZTの改善を図ることが本年度の課題である。
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