2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜を破壊する蛋白質・ペプチドと膜の相互作用の単一巨大リポソーム法による研究
Project/Area Number |
21310080
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山崎 昌一 Shizuoka University, 創造科学技術大学院, 教授 (70200665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 俊彦 静岡大学, 理学部, 助教 (60344389)
丹波 之宏 鈴鹿高専, 教養教育科, 講師 (50436911)
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Keywords | 生物物理学 / ナノバイオ / 生体膜 / 巨大リポソーム(GUV) / 単一GUV法 / 毒性蛋白質 / ライセニン / ポア形成 |
Research Abstract |
蛋白質毒素であるライセニンと生体膜の相互作用や膜中のポア(小さな孔)形成の研究は、従来は小さなリポソーム(LUV)のけんだく液を用いた漏れの実験や赤血球の溶血反応により行われてきたが、これらの研究では相互作用の素過程の解明ができなかった。本研究では、ライセニンと脂質膜の相互作用によるポア形成を単一巨大リポソーム(GUV)法により研究した。まず、蛍光プローブのカルセインの水溶液を内部に含むスフィンゴミエリン(SM)/コレステロール(chol)(モル比6/4)膜(秩序液体相)のGUVとライセニンの相互作用を37℃で調べた。低濃度のライセニンが1個のGUVからの急速な(100-200s)カルセインの漏れを誘起し、完全な漏れが終了したあとでもGUVの構造の破壊や変形は生じていなかった。この結果は、ライセニンが膜中にポアを形成し、そのポアを介してカルセインが漏れたことを示す。ポア形成は確率過程的に起こり、そこからポア形成の速度定数を求めた。ポア形成の速度定数やカルセインの漏れの速度定数は、ライセニン濃度とともに増加した。SM/chol/ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)膜のGUVで同様の実験を行ったところ、膜中のSM濃度の減少とともにポア形成の速度定数は減少した。この結果はライセニンのポア形成にSM濃度が重要な役割を果たすことを示す。さらに、カルセインより大きな蛍光プローブのテキサスレッドデキストラン3K(平均分子量1500)を用いて同様の実験を行ったところ、ライセニンはこの蛍光プローブの漏れを誘起することができなかった。以上の結果より、ライセニンの脂質膜中のポア形成の素過程やメカニズムを考察した。
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